2014年7月1日火曜日

150 バーナム効果:心地よい言葉

 人は、自分には甘いとこがあるのですが、自分の欠点には厳しい面ももっています。そんな人の両面性をくすぐる罠があります。厳しさの中にも自尊心をくすぐるような言葉は、ついつい受け入れてしまいます。そんな誘い言葉には、心理学的は働きがあるようです。

 次に示した項目は、ある専門家に共通する特徴です。これらは、真剣に職務に取り組んでいる人に当てはまるのではないでしょうか。
・独自の考えを持ており、十分な根拠のない意見は聞き入れない。
・弱みを持っていても、普段は克服できる。
・使われず生かしきれていない才能をかなり持っている。
・他人から好まれたい、賞賛されたいと思っているが、自己を批判する傾向にある。
・外向的社交的で愛想がよいときもあるが、内向的で用心深く遠慮がちなときもある。
 あなた自身で、思い当たる項目があったでしょうか。何かにこだわりを持っている人には、当てはまるはずです。もう一度、読みなおして下さい。
 これらの項目が意味することは後で示しますが、ここには実は重要な本質が隠れています。
 さて、話題は変わります。今度は、人のタイプ分けの話です。
 日本では、血液型による性格判断、出身地による県民性のタプ分けなどをして、人を区分して会話の一助にすることがあります。まあ話しの短所や接ぎ穂としてはいいかもしれませんが、そんな単純な区分を嫌う人には逆効果のこともあるでしょう。
 でも例えば、「あえて言うと、あなたは、イヌ派ですか、それともネコ派ですか」というような他愛もない会話なら、あまり気にせずに対応する人も多いのではないでしょうか。そして、「ネコ派の人は・・・」、あるいは「イヌ派の人は・・・」と、それぞれの性格についてや性格の違いについて、話題にしてしまうのではないでしょうか。
 しかし、よく考えると、イヌ派ネコ派の区分は、人を2つのタイプに分けるだけの非常に単純な区分で、1億人を2つに分けて、その区分を話してどうしようというのでしょうか。どちらも嫌い、どちらも好きだいう人も、どのちらにも関心がない、などいろいろな心持ちの人もいるので、それをあえて二分するのは、あまりに乱暴すぎます。また、イヌ派かネコ派かというの背景には、好きか嫌いかという、漠然とした心の問題があります。気持ちを、好きか嫌いかの二分法的に答えを出せるとは限りません。
 二分法であるなら、客観的にはっきりと分けられる、男か女かのような区分であればどうでしょうか。性別は、生物学的にはっきりとしていますので、なんらかの違いが表われます。それをもとに、男だから、女だから、というカテゴリーで、性格づけ、特徴付けや二分法にそぐわない区分を、導入してしまうことは、無意識にやっているのではないでしょうか。ある場面では「女性だからそのような心遣いできたのだ」といったり、「力仕事はやはり男性だな」とか、性別を配慮しているようですが、人間の多様性には配慮されているようには見えません。男性でも細やかな心遣いができる人も、女性でも大雑把なの人もいます。男性でも力仕事が苦手な人もいますし、女性でも力仕事の得意な人もいます。明瞭な生物学的な違いに基づくものですら、このような状態なのですから、タイプ分けには注意が必要です。
 血液型は4種類ですし、医学的にもはっきりとした区分が存在します。それでも、そこで性格の区分を導入すると、そこには危うさが伴ってきます。
 4つの区分で少ないのなら、47都道府県なら多数の区分がありますし、そこに暮らしている人は、気候風土や食生活を反映した何らかの共通性を持つことや統計的な違いはあるでしょう。しかし、その差を人の性格まで延長して県民性にするのは行き過ぎではないでしょうか。
 人のタイプ分けは、ある第三者を想定して当てはめるということがなされています。限られた体験、事例からの類推は、判断を誤る可能性があります。性格や特徴は曖昧な表現でなされます。自分の虚栄心に訴えるような内容は、誰にでもついつい受け入れてしまいがちです。そのような危険性は、冷静に考えれば、誰でもわかることです。
 私が研究者として、最初にあげた項目を読むと、自分自身のこととして考えれば思い当たることがあります。実は、研究者だけでなくても、誰にでも当てはまることではないでしょうか。誰にでも当てはまる「当たり障りがなく」、「嫌な面も」もあるが「前向きな」内容であれば、ついつい信じたり、自分のことだと思ってしまいます。
 何らかの権威や先入観を入れて、自分自身のこととして考えるように導くと、ついついひかかってしまうのではないでしょうか。このような誰もが心当たりがあるような項目を、あなたのことですよと言いながら並べたらどうでしょう。それが上記の項目でした。
 上の項目は、アメリカの心理学者のフォアラー(Bertram Forer)が心理学の学生した実験を少し修正したものでした。
 フォアラーは、ある心理分析の結果であると伝え、その項目が自分に当てはまるかどうか尋ねました。すると、多くの学生は、自分に当てはまると答えています。フォアラーの実験は1948年ものでしたが、その後も何度も繰り返し行われ、今でも当てはまるという結果になっています。
 上の項目は、読者の皆さんも、自分に当てはまると思われたはずです。これらの項目は、フォアラーが新聞にでていた星占いから、星座を無視して適当に抜き出した文章だったのです。これは、何を意味しているのでしょか。
 項目は、だれにでも当てはまるものなのに、自分にだけ特別だと思えるような内容であること、長短両面を持っているものだが前向きにに捉えられる内容になっている、という表現になっています。つまり、誰もが、自分に当てはまると思えるように書かれているのです。さらに、これは専門職や真剣に職務に取り組んでいる人には当てはまるという先入観を抱かせるような文章を付けました。
 誰にも当てはまるのに、自分のことだと思ってしまうような心理学的な現象を、最初に調べた研究者の名前からフォアラー効果(Forer effect)と呼んだり、バーナム効果ともいいます。特に事前になんらかの調査をして、その後に調査に基づいているかのように装ってコメントすれば、誰にでも当てはまる曖昧な文言であれば、自分のことのように思ってしまいます。
 バーナム効果は、いろいろなところに潜んでいます。特にCMや営利目的、詐欺などでは、巧みに利用されています。権威や尊敬を集めたり、営業をうまくしたり、言葉で人を動かすことが得意な人は、意識しようがしまいが、悪意であろうが善意であろうが、このようなテクニックを使っているのかもしれません。星占いの言葉であったことからわかるように、人は、昔からこのようなテクニックを使ってきたのです。
 実害の有無が問題ではなく、今では、人には心理的にこのような誘導にかかりやすいことがわかってきました。あとは、自分がそのような誘導にかからないことですが、これがなかなか難しいのでしょうね。自分に心地よい他人の言葉は、注意が必要なのでしょうね。

・誰にでも当てはまるものがある・
バーナム効果のバーナムとは、アメリカの興行師でした。
バーナムはジョージ・ワシントンの元乳母という黒人奴隷の女性、
ジョイス・ヘス(Joice Heth)を引き取りました。
もし乳母であることが本当なら、
160歳を超えていることになります。
バーナムはヘスを見世物として、興行に利用しました。
他にも障害者を利用した興行をしていました。
ヘスのような存在に少し情報を付加して
巧妙な宣伝をすることで興行を成功に導きました。
心理学者のミール(P.E.Meehl)は、
バーナムがいった、「誰にでも当てはまるものがある」
という言葉にちなんで、命名したものだそうです。

・夏の青空・
6月中旬は天候が不順な日も多かったのですが、
下旬からやっと夏らしい青空が戻ってきました。
そして、いよいよ7月です。
北海道も暑くなってきました。
ただし、本州のような梅雨はないので過ごしやすいです。
先日、網戸を張り替えました。
初めての経験でしたが、
必要な道具をホームセンターで購入してきたら、
案外簡単に張り替えることができました。
破れたり汚れているものから、
新しい網戸にすると網戸越しでも
心地よい青空が見えます。