地質学の格言に「岩石は嘘をつかない」というものがあります。この言葉には、地質学が宗教的呪縛から逃れるための歴史がありました。この言葉が生まれるまでの背景をみていきましょう。
西洋の科学の歴史と宗教の関係を考えています。近世ヨ―ロッパでは、ルネサンスや宗教改革を経て、ベーコンの帰納法やデカルトの演繹法などの科学的方法論が確立されてきました。自然科学、特に物理学の発展、そして生物学では進化論がでてくるような科学革命が起こってきました。
同じ時期、地質学でも重要な発見が起こっていました。聖書の記述とは異なった長い時間の経過があったことを野外観察から気づいた地質学者たちがいました。例えば、18世紀後半、スコットランドの地質学者ハットン(James Hutton)は、現在起こっている自然現象は過去にも起こっており、その積み重ねが過去の地質学的変化を起こしてきたと考えました。
例えば、現在の川が氾濫して、100年に一度の大洪水が起こると、河原の景色や川の形が大きく変わることがあります。洪水が持ち去った土砂は海に流れ込んでいったはずです。大量の土砂が海底に流れこんで、一層の地層になるはずです。長い年月を経れば、何層もの地層ができ、やがて固まり岩石になります。さらに長い時がたてば、場所によっては、地層が持ち上げられ、陸になり、山となることこともありました。山となった地層は、侵食を受けて、露頭となって目に触れるようになります。
このようなシナリオを、多くのひとは当たり前だと思えます。その背景には、現在起こっている自然界での作用が、昔も同じように起こっていたという、「現在は過去を解く鍵」と呼ばれるに考えに基づいてなされています。このような考え方は斉一説(uniformitarianism)と呼ばれるものでした。
西洋で斉一説が認められるに当たり、宗教との激しい論争がありました。聖書では、ノアの洪水のようは短期間に起こった天変地異が書かれています。それで大地での大きな現象は説明されてきました。また、聖書には、地球や生命のはまりの物語として創世記があり、そこでは地球や生命の創世にかかった時間が記されています。
その創世の時期は、現在までは、聖書の記述に基づいて計算できます。アッシャー大司教のものが有名で、キリスト誕生から 4004年前とされており、他にも何人かの人が計算しています。長い計算でも、1万年に満たない年代となっていました。
ところが、地質学の斉一説で自然現象をみると、地層の形成から陸地での地層の侵食までの時間として、1万年程度の時間では、決してできそうもありません。ハットンは、1788年の論文に、
The result, therefore, of our present enquiry is, that we find no vestige of a beginning, - no prospect of an end.
(したがって、我々の現在の探究が導き出した結果は、はじまりの痕跡も見当たらず、終わりの見込みもない、というものである。)
と書きました。そこで述べたかったことは、地層(地球)の形成がいつはじまったのかの証拠すら見つからないほど古く、地層形成プロセスが、いつ終わるともわからず、未来にも続いてくように見えると、ということでした。
その後、この論文は、1795年に2巻の書籍として出版されました。ところが、このハットンの論文も著書も、文章が難解で回りくどく、長文であったため、重要性が多くの人には伝わっていませんでした。それを残念に思ったプレイフェア(John Playfair)は、ハットンの思想をわかりやすく解説した書籍を1802年に書いたことで、その内容が広まっていきました。
プレイフェアは本の中で、地球の歴史の考察は、宗教教義に基づくべきないと主張し、
The record of the past is written in the rocks; it is a history which we are to read, and not a fable which we are to invent.
(過去の記録は岩石の中に書かれている。それは、我々が読み解くべき歴史であって、我々が捏造すべき寓話ではない。)
といいました。続いて、
In the language which nature employs, the characters are indeed plain and intelligible, but the grammar is yet to be fully understood; and it is from the study of the phenomena themselves, that we are to learn the rules which they obey.
(自然が用いる言語において、その文字は実に明快で理解しやすいものであるが、その文法はまだ完全には理解されていないし、我々が従うべき法則を学ばなければならないのは、現象そのものの研究からである。)
これは、自然のcharacters(文字:地層の重なりや特徴のこと)は観察すれば、わかりやすいものです。しかし、表面に出ていないgrammar(文法:自然法則でここではハットンの示した地質法則)はまだわかっていません。法則は、現象そのものを研究(the study of the phenomena themselves)をしなければならないといっています。
ハットンもプレイフェアも、地質学現象の法則は、過去の歴史は岩石の中に書かれているので、それを研究していくべきであると、主張したのです。そこから、「岩石は嘘をつかない(Rocks do not lie)」という言葉が生まれました。
アメリカの地質学者マッキー(Edwin D. McKee)は、地層が地球の歴史を記録していることを、「人間は嘘をつくが、岩石は嘘をつかない。ただ、人間がその読み方を誤るだけだ」として説明していました。同じくアメリカの地質学者のスピーカー(Edmund Maute Spieker)も、いくつかの論文で、この言葉を用いています。
アメリカの地質学者モンゴメリー(David R. Montgomery)は、2012年に著書のタイトルで、"The Rocks Don't Lie: A Geologist Investigates Noah's Flood"(岩は嘘をつかない:地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史)を出版しています。この中で、岩石が語る真実を聞き入れれば、人の物語の背景にある「現実の驚異」を知ることができる、といっています。そして、科学と信仰は必ずしも敵対するものではないとも考えています。
斉一説は、過去の現象を探る上で強力な武器ですが、それより優先すべきは岩石に書かれた文字を、読み取ることです。なぜなら、岩石は嘘をつかないからです。
・涼しい夏・
いよいよ9月になりました。
今年の北海道では、
夏の暑さをあまり感じることは
ありませんでした。
昼間暑い日があっても、
夜になると涼しくなりました。
夜も暑て窓を開けていたのは2、3日。
また、エアコンをつけたのも2、3日。
北海道以外では、
猛暑や酷暑の話題が多かったのですが、
今年の夏は過ごしやすくて助かっています。
・術後・
8月上旬に手術を受けてから、
そろそろ1ヶ月がたとうとしています。
人によって治癒の時間は
異なっているそうです。
1ヶ月から長ければ3ヶ月かかるとのことです。
今後も体調が戻るまで
無理せずに過ごすしかないようです。
9月中旬に出かける予定でしたが、
それも中止しました。
健康にもどることを優先しましょう。