2021年6月1日火曜日

233 アポリア:難問と実践と

 日本では以前COVID-19の感染が広がっています。少し前までは、COVID-19は難問でしたが、最近では解決の方法が見えてきました。成功事例も多数あるので、あとは実践あるのみでしょうか。


 哲学では難問や、行き詰まりになった状態をアポリア(Aporia)と呼んでいます。ギリシア哲学で使われている用語です。

 プラトンは、ソクラテスを主人公とする対話で多数の本を執筆しています。本の中では、対話によって、アポリアが提示されて終わる話しが多く描かれています。ソクラテスは、対話を通じて相手をアポリアになることで、まだ何も知らない無知であることを知らしめています。プラントは、ソクラテスが相手をアポリアに陥らせるという書き方をすることで、アポリアから新しい展開を生み出せる可能性を暗示するという方法論を提示しているようです。

 ただし、対話者がそアポリアからの脱出のための意欲や行動に進めるかどうかが、重要になってくるでしょう。アリストテレスは「形而上学」の中で、先哲たちを悩したアポリアをリストアップして、それらについて自身で考えていきました。つまり、プラトンの暗示した方法論で、アリストテレスは、アポリアへの解決策の探索を実践していたのです。アポリアを把握し、アポリアからの脱出のために考え、実践することことで新しい方法論を付け加えました。アリストテレスの方法論の提示も、暗示されているものです。

 ソクラテスの対話から生まれたアポリアを、プラントは方法論にして、アリストテレスはアポリアを解決するために実践をおこなうことで、解決のための方法論まで進めました。アポリアは、単に難問という意味だけでなく、難問からの脱出をも促しているようです。ギリシア哲学の巨人たちが、体現してくれているのです。後人は先人の導き従えばいいのです。

 さて、現在の日本は、閉塞状況が継続しています。各地で緊急事態宣言が今月へも延長されそうです。そんな地域では、自粛が慢性化してきて、歪んだ日常が当たり前になってきています。自粛をしている人にとって、COVID-19は解決できないアポリアなのでしょうか。この閉塞状況はアポリアでしょうか。考えていきましょう。

 まずは、現状把握から。政府のCOVID-19への対処に関して、多くの人が政府の対処に不満、失望を感じています。後手だったり、時期を間違った対象だったり、無駄なところに費用を使ったり、科学的な裏付けのない政治判断だったり、人命より他のものを重視したり、強者には忖度するのに、弱者には冷淡だったり、と言い出せばきりがないほどの愚痴が、次々と沸き起こります。

 これらは、アポリアではなく失策ではないでしょうか。さらに、オリンピック開催には、多くの人が反対しているのに強行開催しようとしています。政府は、人命よりオリンピックの方が重いと考えているのでしょうか。もし実施して感染爆発や多くの重症者や死者が出たとしたら、選手や関係者の気持ちはどうでしょうか。あるいは国民の気持ちはどうでしょうか。

 これらすべての難局はアポリアでしょうか。COVID-19へ適切に対処した国は現在対処しつつあります。対処が混乱したアメリカ合衆国でも、指導者が交代して対策を強く推し進めたところ、半年ほどで一気に感染を抑え込みつつあります。難局への対処への方法論は、いろいろな国で実践が積み上げられてきました。

 国内に入れない水際対策、入ってきたらロックダウンと経済的保証、対ウイルスのワクチンの開発、ワクチンの早急な認可と充分な量の確保、接種態勢の緊急的方法の確立など、いろいろな実践があります。それぞれの場面で専門家や企業、行政などの連携が不可欠ですが、それを統括するのが、政治家としての手腕が問われるところです。残念ながら日本はそのような人材は乏しいようです。

 では、どうすればいいのでしょうか。古代ギリシアの先哲の知恵を借りましょう。

 ソクラテスは対話にて、相手がアポリアになっていることを示しました。現在の日本のCOVID-19における状況は、まさにアポリアです。プラトンはアポリアを知るという方法論は示しました。アリストテレスはアポリアをリストアップして、解決のために実践するという方法論を示しました。現状で各国のCOVID-19への対処、そして脱出のための実践例は多数示されています。それを適用し実践すればいいはずです。そして政治や指導者の態度も、各国で示されています。

 先人の実践があれば、先人から学べば後人はアポリアからの脱出はしやすいはずです。後発のメリットは、実践例が多数あり、それを自由に組みわせて有効に利用できることです。あとはそれを、実践する行動力、決断力です。ところが、なぜか日本ではできていません。そして、前掲の国民の愚痴へと戻っていきます。堂々巡りに陥りそうですね。


・緊急事態宣言の延長・

北海道も他の都府県とともに

緊急事態宣言が延長されそうです。

その期間は、6月20日までになりそうです。

大学も当然、緊急事態宣言に対応して

遠隔授業がはじまり、継続しそうです。

もしかすると、前期の講義全体が

遠隔授業のまま終わってしまいそうです。

昨年と同様の状態になったら、

1年生、2年生の学生は、

大学の体験的学びを体得できない、

なぜ大学にいるのかという不安、

友人やサークルでの人間関係の形成不足

など考えてしまうことになりそうです。

教員もそのような悩みへの対処も

十分できなくなるかもしれません。


・研究計画の再考・

緊急事態宣言の発令とともに

予定していた野外調査が、

次々と中止、延期に追いやられてます。

その分は、時間的には補うことができません。

たとえ、7月に野外調査が開始できたしても、

集団免疫ができない限り、

ワクチン接種が広まらない限り、

いつ感染爆発が起こるかわかりません。

注意ながらの調査となりそうです。

今年度の当初予定していた研究計画も

考え直す時期になっています。