2018年4月1日日曜日

195 三友:実利とノスタルジー

 友人関係には、現在進行中のもの、実利関係で結びついているもの、実利がなく過去からの付き合いのもの、いろいろな関係があります。実利のない関係は、なかなか居心地がいいですが、注意も必要です。

 地質調査には、ひとりでこつこつとおこなうものと、グループや共同で組織だっておこなうものとがあります。目的に合わせて用いられます。私は、現在では、ひとりでおこなう調査ばかりをおこなっています。自分の現在の研究テーマが、ひとり露頭や石に向きあって考えていくことが中心になっているからです。まれに友人たちと調査をおこなうこともありますが、それは現在のメインテーマとはなっていません。
 以前は、非常の大きな学術研究や海外調査のメンバーとして加わったり、自身が代表になっておこなった共同研究や海外調査などもありました。目的を同じくした人たちと共同研究をすることは、ひとりではできない広範囲や作業量、データ量などをこなしたり、メンバーの多様な専門性を活かしたより広範で学際的な研究もおこなえます。共同研究でないとできないものテーマも多数あります。
 最近は非常に大きな国際的な共同研究が、いくつもおこなわれるようになりました。論文でも、数十人が著者として名前を連ねることも珍しくありません。そんな巨大研究プロジェクトは、マネジメントする人たちは、非常に大変な苦労をしているだろうなと思います。それでないとできないような研究もあるのです。巨大な望遠鏡や、実験装置などを開発したり惑星探査をしたりするような研究は、大人数にならざるえません。
 共同研究をおこなうとき、同じような専門性を持った人たちなら、気の合った人たちを選びます。つまり、その研究に達成するために、その人の専門性や技量もさることながら、一緒に研究を進めていける人たるかどうかが、重要になります。
 巨大プロジェクトはさておいて、比較的少人数での共同研究、あるいは共同作業を考えましょう。他の人と何かをおこなうとき、そのメンバーをどのような基準で選ぶか、ということが今回の話題です。相手の専門性や能力は、共同する場合、重要になります。でも、相性の悪い人とは、共同研究は多分うまくいかないでしょう。なんとか進めても、精神的に非常に疲れたものになるでしょう。人数が少なければ少ないほど、相性の悪い人との共同は、難しくなるでしょう。しかしそれなりの専門性や能力がない人とは、共同作業はできません。
 ある人が他の人と共同研究をする場合です。Aさんは、専門的能力が秀でているが、自分とは相性が悪い。Bさんは、専門能力はそれほどではないが、まあまあ相性が合う。このような選択であれば、テーマに緊急性や実利性が強ければAさんを、それほどでなければ多くの人はBさんを選ぶでしょう。では、もうひとりCさんがいて、専門能力は一番劣っているが、一番相性が合うとしましょう。Aさん、Bさん、Cさんのうち一人を選ぶとすると、誰を選ぶでしょうか。
 実利的に考えればAさんを、気持ちよく共同研究をしたい人はCさんを選ぶでしょう。折衷案がBさんでしょうか。共同研究の目的、あるいは達成の優先度や切迫感、期間にも左右されるでしょう。早急に確実な成果を求められているのならAさん、成果も必要だが、あるていど長い研究期間が必要の場合はBさんでしょう。萌芽的なテーマで、非常に長い期間に及び、共同での野外調査などもあり、あれこれ相談しながら試行錯誤、修正しながら研究が進めなければならないのなら、Cさんでしょう。
 人対人の付き合いは、難しいものです。「持つべきものは、友」という言葉があります。私も、友人は大切だと思います。でも、そこに上で述べたような、利害や成果がからでくると、選択は悩ましく、どろどろした打算が芽生えてきます。最近の研究には、そのようなものが多くなってきているような気がします。ですから私は、個人できる研究を専らとしています。
 一般的な友人関係を考えてきましょう。私は高校を卒業してから、立場や職業、住居を転々と変えてきたので、長い付き合いしている人は、限られています。近所付き合いから発展したものはありません。しかし、最近、同窓会や定年、還暦などで、同世代の友人たちと連絡を取りあうようになってきました。私だけでなく、SNSの普及により、今まで連絡を取り合っていなかった友人たちと、連絡が取り合えるようになった方いるのではないでしょうか。昔懐かしい友人は、いいものです。でもその多くは、SNSやメール連絡が中心しているのではないでしょうか。
 私は、大学の学部の同期で、いち早く?還暦を迎えた仲間がいて、その人を中心に連絡を取り合うようになりました。そして、同窓会のメールでの連絡網が復活して、同窓会での飲み会も実現しました。今年の秋にも、また同窓会がありそうです。そんな友人関係は、自分にとって実利的な関係がないので、居心地のいいです。個人的に合う合わないのようなものがあるでしょうから、同窓でも合わなければ、連絡をスルーすればいいわけです。メールはそんな疎遠さを生み出すこともできます。
 一般に、どんな友人が良くて、どんな友人が良くないのでしょうか。孔子は、益者三友と損者三友としていっています。益者三友とは、役に立つ友人のことです。その三友とは、
  友直 友諒 友多聞 益矣
  直(なお)きを友とし、諒(りょう)を友とし、多聞(たぶん)を友とするは益なり
といっています。これは、直きは正直なこと、諒は誠実なことで、多聞は博学のことです。そんな人を友とすること、自分の益となるといっています。
 損者三友とは、
  友便辟 友善柔 友便佞 損矣
  便辟(べんぺき)を友とし、善柔(ぜんじゅう)を友とし、便佞(べんねい)を友とするは、損なり
といっています。便辟とは体裁のことで、善柔とは人当たりがいいが誠意のないこと、便佞とは言葉巧み、口がうまいことです。そんな友人は損者となるといいます。
 孔子はもっとなことをいっていますが、ある人にとっては、損者かもしれませんが、別の人にとっては、益者となっているかもしれません。ある時は益者となり、またあるときは損者となることあるでしょう。研究という実利面があっても、Aさん、Bさん、Cさんの例のように、損者であっても、うまが合う方を選ぶこともあるでしょう。まして、研究などという実利的な絡みがないところでの友人関係は、もっと多様な選び方をされるでしょう。
 古い友人とは、ついつい思い出話に浸っていき、現実逃避になってしまいそうで、少々注意が必要です。過去のノスタルジーの世界は、なかなか居心地のいいところなので、長居をしなようにしなくては。

・新年度・
いよいよ新年度なります。
大学も新入生を迎え、学年をひとつ上がった学生となります。
最近は、大学のスケジュールもタイトになり、
我が大学では4月の初日に入学式がおこなわれます。
そして1週間でガイダンスをすませて、
翌週からは講義がはじまります。
学生も慌ただしいですが、教員も慌ただしくなります。
もう少し落ち着いて、
新年度のスタートができればいいのでしょうが、
そうもいかないようです。
これからは、ますますタイトになることあっても、
のんびりという時代には戻りそうもありませんね。

・夏靴夏タイヤ・
今年は、北海道では久しぶり雪解けも早いです。
暖かい日も多くなってきます。
全国的な傾向でもありますが、
今年は、暖かさと寒さの変動が激しいようです。
靴ももう夏グツに変えます。
車ももう夏タイヤでもいいかもしれません。
近々変える予定です。