2005年10月1日土曜日

45 想像力:地球を拡大する(2005.10.01)

 人には想像力という偉大な力があります。そんな想像力を駆使して地球を考えていきましょう。

 人はいろいろなことを想像できます。しかし、想像した結果は、人それぞれで、場合や状況によっても、経験や知識によっても、違ってくるでしょう。人間がせっかく持っている能力ですから、想像する力を有効に使うべきでしょう。
 こんな質問をしましょう。この世で一番大きいものは何か想像してください。いろいろなものがあるでしょう。それはなんでもいいのです。きっと手のひらに乗るようなものではないでしょう。
 でもその想像したもの、例えば「宇宙」としましょう、が手のひらサイズであったとしましょう。するとどうでしょう。頭の中では、創造した瞬間に宇宙が手のひらサイズになります。それは、この世で一番大きいもののはずです。宇宙であれば、半径は光がたどり着くのに137億年もかかる大きさなのです。それを、頭の中では一瞬にして想像できるのです。すばらしい力です。
 でも、孫悟空が筋斗雲(きんとうん)に乗って遠くまでいったのですが、それは所詮お釈迦様の手のひらの中であったという話に似ていますね。
 もう一つ質問です。この世で一番大切なものはなんですか。これはそれこそ人それぞれでしょう。金、名誉、感情、愛、理性、家族などいろいろなものがあったでしょう。さまざまな答えがありうるのですが、誰でも一番大切なものは「自分」であるはず。すべて「自分」が存在するから金が必要で、名誉を守なければならず、感情、愛、理性は「自分」があるから存在します。「自分」がなければ、その家族はもやは「自分」の家族でありません。
 このような考えは、誰もわかっているのことなのですが、いわれるまで、ついつい忘れていることです。このように忘れていることを思い出さしてくれるのも想像力ではないでしょうか。
 では次に、地球を想像しましょう。
 ある人は、自分が立っている大地を地球を想像したかもしれません。その人が想像した地球は、もっと一般的な言葉でいえば、固体の地球(固体地球といういいかたをします)です。これも地球の姿です。
 またある人は、宇宙から見た青い地球を想像したかもしれません。青い地球には、よく見ると青だけでなく、白や茶色、緑などの色も混じっています。青は海の色です。白は雲と氷、雪の色です。茶色は大地の色です。緑は大地を覆う植物の色です。
 宇宙から見た地球には、大地、つまり固体だけでなく、液体や気体、生命も含まれています。液体とは海洋のことです。気体とは大気のことです。目に見える部分として、海や雲、生命も地球に含まれていると見なしているのです。
 さて、今まで地球について想像してきたことは、実は、地球を拡大解釈してきたことになります。物理的に地球の定義を拡大してきたのです。内側から順番に書いていくと、
(固体)から成る地球
(固体+液体)から成る地球
(固体+液体+生命)から成る地球
(固体+液体+生命+気体)から成る地球
という順番でしょうか。
 ここまでは見える地球でした。さて、地球とは見えるものだけでしょうか。地球に詳しい人なら、地磁気の影響を考えたかもしれません。磁気は目に見えません。しかし、地球は大きく強い磁石ですから、地球の周りには強い磁場があります。この磁場が地球を取り巻いて、大部分の宇宙線をはじき返しています。そのおかげで、生命は地表で過ごすことができます。
 目に見え磁気を加えると、地球は次のようになります。
(固体+液体+生命+気体+磁気)から成る地球
まあここまで来ると、内側からという順番はなくなります。
 ご存知かもしれませんが、地球の磁気は、地球の中心にある融けた金属鉄核(コアと呼びます。外核が融けていて内核は固体)の流動によって発生しています。ですから、内側から順番という規則は成り立ちません。
 重要なことは、順番ではなく、想像力によって地球が拡大されてきたことです。
 地球の拡大はここまででしょうか。いえいえもっと拡大は可能です。想像してください。磁気は目に見えませんでした。しかし、目に見えなくても、科学的に存在が証明されており、地球の一部とみなしていいのであれば、磁気と同じように地球に加えるべきです。
 例えば、光や電波などの電磁波、重力なども加えるべきでしょう。それらを磁気も含めて「見えないが存在するもの」と呼びましょう。すると上の地球は、次のように書き換えることができます。
(固体+液体+生命+気体+見えないが存在するもの)から成る地球
これによって、磁気だけよりも地球は拡大されました。
 もっと拡大できます。私たちの科学は進歩しましたが、まだまだ未知のことがたくさんあります。科学者という職業が成り立っているのもそのためです。科学がこれからもいろいろなことを解き明かすでしょう。しかし、現在はまだ未知ですが、存在するはずのものも地球に加えるべきです。
(固体+液体+生命+気体+不可視の存在+未知の存在)地球
長ったらしいので言葉を省略しました。
 だいぶ広がってきました。存在すら不明で、知ることができるかどうかもわからないものも加えましょう。そんなものがあるでしょうか。こんな例はどうでしょうか。神や霊、魂、超常現象などは、人によって信じる信じないがあります。信じる人にとっては見えないが存在を確信しているはずです。信じない人にとっては、存在しないものです。いってみれば、現在の科学が手が出せないグレーゾーンの存在です。
 想像力を広くして、それも地球に加えましょう。
(固体+液体+生命+気体+不可視の存在+未知の存在+不可知の存在)地球
となりました。
 いかがでしょうか。大きな地球になりました。いつのまにか、よく想像されている地球の領域をはるかに超えてしまっています。宇宙より大きなものにもなっています。また、ここで想像した地球は、物理的な構造だけでなく、人類の知的な構造も示しているようです。知的構造は階層性をもっていることがわかります。そして、この階層性は、人類の地球認識の発展様式をも示しています。さらに、地球には、このような階層性の存在を知覚する人類の知性というものがあります。
 「自分」は人類の知性の象徴でもあります。「自分」は自分にとって、広い宇宙の中で唯一の存在です。「自分」とは、宇宙にくべると非常にちっぽけな存在ですが、偉大なる想像力をもち、この世に一つしかなく、これ以上大切で偉大なものがものはありません。そして、「自分」を大切にするには、家族、感情、愛、理性、地球、宇宙など、「自分」とつながりをもつものも守らなければなりません。
 私が想像できた地球は、ここまでです。人によってはもっと想像たくましく、いろいろな地球に思い至ったかもしれません。地球について、人それぞれのイメージがあっていいはずです。あるいはそのイメージにまつわる感情もあっていいはずです。いろいろ想像を膨らませてみてはいかがでしょうか。

・時と場合を選んで・
 想像を膨らませなさいといいましたが、それはもちろん時と場合をわきまえるべきです。日常生活で常にこのように想像を膨らませてばかりしていると、それは誇大妄想癖とか嘘つきと呼ばれかねません。創造力を発揮する時と場所には注意する必要があります。
 使うべき時とは、創造力を発揮すべき時です。素材があってそれを何ができるか、どうするか、などを考える時です。例えば芸術では独創性を発揮する時、科学ではいろいろな仮説を考える時などです。そのときには、妄想や嘘をはるかに越える想像力を働かせましょう。
 自分が納得できるような新しい芸術作品、自分には独創的ですばらしいと思えるような仮説などが生まれれば、少なくとも自分にとって想像力は有効に働いたことになります。できれば、その想像の結果が、他の人にとっても心動かされたり、感心したりできるものであればいいのです。そんな時、想像はうまくいくったことになります。
 さて、私が上で述べたような想像力の話の展開はいかがだったでしょうか。誇大妄想や嘘つきのように映ったでしょうか。もしそうなら、私もまだまだ修行が足りないようです。まだまだ、孫悟空のように、お釈迦様の手のひらの上でもがいているだけなのかもしれませんね。