2024年4月1日月曜日

267 過去の因果と地質学

 地質学は、過去を探る学問です。岩石や地層などの実物を用いて検証された情報は、因果の記録ともいえます。検証された因果から構築された地球の歴史が、地質学の大きな特徴です。未来への使用には注意が必要です。


 時間は、過去から現在、そして未来へと流れていきます。過去から現在まで流れている時間は、すでに終わっているので、検証できる可能性があります。未来への時間は、多分、これからも継続的に流れていくでしょうが、これまで通りに流れるかどうかは、検証不能です。
 未来の検証不能性とは、単純にいえば、「未(いま)だ来(こ)ない」時間なので、検証対象にはできないためです。過去の検証可能性は、因果関係を前提としています。因果関係とは、何らかの事象に対して、ある原因で起こった結果との関係、もしくは結果を起こした原因との関係のことです。因果関係が成立していることが、検証の前提になっています。したがって、結果が起こっていない未来は、因果関係が成立していないので、検証できません。
 過去と未来の違いは、自然界に存在する実物、実在している事象、個物など、すべてに対して適用されます。自然界からえられたデータ、情報をもとに、すべての科学の体系が構築されていきますので、この束縛を受けています。過去から現在までの時間では、因果がすでに終わっているので、その関係は検証可能です。
 ただし、本当に検証できるかどうかは、証拠(情報)がえられるかどうか、その証拠の精度が十分かどうかによって変わってきます。
 地質学の素材は、過去に形成され、現在入手できる岩石や地層になります。地質学の素材は、すべて因果における結果となりますので、検証作業が適用できます。
 ある時代にできた岩石(マグマが固まってできた深成岩)があったとします。その深成岩が入手できれば、いろいろな観察や分析ができます。
 岩石をルーペや、光を通すほどに薄くして岩石専用の顕微鏡(偏光顕微鏡といいます)を用いれば、岩石を構成する鉱物や組織を観察できます。どのような鉱物からできているか、組織からどの鉱物がどの順番に結晶してきたのか、どのようなスピードで結晶化したのか、などを定性的に知ることができます。マグマが固化する過程、つまり「過去の現象」を、定性的ですが、復元することができます。
 岩石の成分には放射性元素も含まれています。放射性元素には半減期があり、適切は半減期の成分が分析できれば、岩石が形成された年代を決めることができます。マグマが固化した「過去のある時点」を定量的に決定できます。分析精度が高ければ、ひとつの鉱物内部の数マイクロの部分の年代を測定する技術が開発されています。その技術を利用すれば、古い深成岩で変成されて元とはかなり異なった変成組織になっていても、深成岩の鉱物が残されていれば、マグマから形成された年代を復元することが可能になりました。
 また、深成岩の岩石全体や個々の鉱物の化学組成から、マグマがどのような形成過程(どのような物理条件でできたか)、どのような固化過程(結晶化の過程)を経てきたのかを、かなり定量的に追いかけることも可能です。また、マグマがどのような材料(起源物質といいます)からできたのかも探ることもできます。
 過去の素材(深成岩)があれば、過去のある時点の何らかの因果関係(マグマの過去のさまざまな様子)について探ることができる、ということです。地質学は、過去の因果を探求していく学問でもあります。
 ここまでは、ある深成岩の例でしたが、このような作業を、いろいろな時代の深成岩で進めれば、マグマの時代ごとの多様性から、時代変化を知ることになります。いろいろな地域の深成岩でおこなえば、地域ごとの多様性から、地質場ごとの特徴を知ることできます。
 収集の方法やえられる情報は異なりますが、火山岩、堆積岩、変成岩に対して、それぞれに進めていけば、岩石の特徴ごとに、過去の地球の様子を、検証可能性をもって、実証的に知ることができます。これらを時間ごとに編纂して集大成していけば、地球史となります。
 さて、ここまで地質学の特徴である過去の因果を解明していく方向性でした。次に、一般の自然科学が目指す方向をみていきましょう。もし個々の地域や時代の深成岩から、地域性や時代の変化に左右されない、普遍的な特徴が抽象され、帰納できれば、それは普遍化された理論、一般論ができます。
 深成岩の研究から、マグマの形成過程、固化過程についての普遍的な成因論を読み取ることが可能かもしれません。同様に火山岩、堆積岩、変成岩などからも、一般論ができるはずです。地質学では、このような作業を繰り返しながら、鉱物形成論や化石形成論、あるいは火成作用、堆積作用、変成作用の一般論も構築してきました。
 このような普遍化の方向性は、物理学や化学では通常の科学的方法論となるでしょう。一般論があれば、いつでも、どこでも適用できるはずなので、未来へも、演繹していくことも考えられます。
 もし未来に、火山が活動すれば、もし断層が動けば、もし地震が起これば、なども、一般論を適用すればいいはずです。一般論はありますが、結果は検証されたものではありません。そうなると、最初に話をした未来の因果関係に抵触してしまいます。さらに、その予測精度が問題になります。
 物理学や化学では、一般論の予測精度は、一定の範囲に収まり、未来予測もある程度の誤差に収まるでしょう。予測精度がはっきりしていれば、活用していくべきでしょう。社会的影響、人への影響などが小さなものであれば、未来予測は自由にしていいでしょう。
 地質学や気象現象など、複雑な自然現象に関わるものは、一般論の予測精度はあまりありません。地球環境は複雑なので未来予想には、不確かさが常に伴っています。未来予測には、火山噴火、地震発生、長期の天気予報、気候変動など、人や社会へ影響の大きなものもあります。
 未来は因果関係の範疇を超えている上に、複雑で複合的な未来予測は、一般論においても不確かがあります。地質学は、過去を知るうえでは重要な学問ですが、未来への適用には注意が必要です。地質学以外にも総合科学には似た宿命をもったものもあります。未来への運用は慎重にすべきでしょう。これも未来の話になるので、予想は危険かもしれませんが。

・飛ぶ鳥あとを濁さず・
2024年4月になりました。
新学期、新生活などを迎える人も多いと思います。
その方たちは、これまでの生活に
一旦は区切りをつけてことになります。
さて2024年度は、区切りの年になります。
今年度で、退職となるので、
この1年でなすことすべてが
最後のものになります。
大変なことも、楽しみなこともあるでしょう。
この1年は、目立たぬように、波風を立てずに
静かに終わりを迎えたいと考えています。
しかし、与えられることは可能な限り
できる範囲で受けてこなしていきたいと思います。
飛ぶ鳥あとを濁さず、でもあります。

・fade out・
昨年度は半年間のサバティカルでした。
12年前の1年間のサバティカルがあり
それが開けた時の気持ちは、
I have a dream. でした。
内に秘めた夢と、
外に出すべき夢がありました。
それを実施することに
その後、10年間努力してきました。
昨年度のサバティカル開けの目標は
フェイドアウト(fade out)となりました。
穏やかに過ごしていこうと考えています。
精神的にも肉体的にもかなり老化がきています。
心身を宥めすかしながら、
老化に折り合いをつけながら
過ごしていくことにします。

2024年3月1日金曜日

266 This View of Geology かくのごとき地質観

 ダーウィンが見た生物進化の壮大さと同じものを、地球創成にみます。そして進化に結実した生命観は、地球進化への地質観に相通じるものがあるように見えます。そんな壮大な物語をまとめています。


 現在、著書の執筆を進めています。毎年、この時期に執筆をしているので恒例の作業ともなっています。大学では講義がなく、時間的に余裕がある時期になっているからです。印刷出版費を、競争的研究費として申請をするためには、見積もりが必要になります。そのため、4月には初稿ができて、だいたいのページ数が必要になります。そして、今回の著書が、来年度末に退職となるため、最後のものになります。ライフワークの総まとめとなるので、力も入っています。
 博物館の学芸員時代に業務上はじめて、研究してきたテーマを当時まとめました。そして25年たったこの時期に、再度、研究テーマとして取り組むことになりました。その分野で大きな進展が、ここ数年に起こったため、興味が再燃しました。執筆中に幸いも、いろいろなアイディアが湧いてきて、この25年間に進めてきた、大きな研究テーマが、最後の著書として体系化できそうになってきました。
 これまで取り組んできた地層に記録されている時間、そして過去の時間への地質学的視座の特徴などから、「時間のらせん」というアイディアが湧いてきました。また、斉一説の適用限界に対して、「アブダクティブ斉一説」という発想が生まれました。これらについては、別のエッセイで、順次に紹介していこうと考えています。
 さて、本エッセイのタイトルは、スティーヴン・ジェイ・グールドにあやかっています。グールドは私にとっては、師とも仰いでいる地質学者であり、進化学者でもあり、なにより科学エッセイストとしても一流です。グールドを師と考えているのは、グールドの著書でも地質哲学的思索に大きな刺激を受けてるためです。
 グールドは、アメリカ自然史博物館の月刊誌Natturl Historyに「This View of Life」(かくのごとき生命観)というタイトルで連載したエッセイが有名でした。1974年1月からはじめ、25年にわたって、一度も休むことなく連載を続け、予定通り2001年1月で終了としました。すべてのエッセイは、全10冊の著書になり、邦訳されています。
 月刊エッセイの連載が25年とは長い期間です。博物館ではじめたテーマが今まとめ直している期間や、この職場に2002年に移籍してきてからの期間も、似たものとなっています。しかし、期間や数値は、どうでもいいことでしょう。重要なのはグールドの姿勢です。
 グールドのエッセイに込めた執筆姿勢に感銘を受けています。それぞれのエッセイの内容は、常に原典、一次資料に当たるという姿勢が貫かれていました。さらに、地質学の話題だけでなく、いずれも重厚にして、時に高尚にて、時に神話から古典へ、時に機知に満ち、時に好きな野球やクラッシクの洒脱さ、縦横無尽に、話題が飛び回っていきます。それでいて、その教養レベルは常に高いもので、読んでいても、知性がかきまぜられる思いがしました。
 グールドの連載エッセイのタイトルは、「This View of Life」です。これは、ダーウィンの「種の起源」に依っています。「種の起源」の最後の一文として"There is grandeur in this view of life"(かくのごとき生命観には壮大さがある)からとったものです。
 このエッセイのタイトルも僭越ながら"This View of Geology かくのごとき地質観"としたのは、グールドを引用したからです。
 そこでも、グールドの愛したダーウィンの「種の進化」の最後の文章を、自分なりに読むことにしました。幸い、インターネットに初版の文章が公開されています。引用して、約しておきましょう。

There is grandeur in this view of life, with its several powers, having been originally breathed into a few forms or into one; and that, whilst this planet has gone cycling on according to the fixed law of gravity, from so simple a beginning endless forms most beautiful and most wonderful have been, and are being, evolved.
(Darwin C., 1859, On the Origin of Species. https://www.gutenberg.org/files/1228/1228-h/1228-h.htm#chap14 2024.2.20閲覧)
かくのごとき生命観には壮大さがある。それは、いくつかのもしくは 1 つの形にもともと息づいていた力に、そしてこの惑星が重力の普遍の法則に従って巡っている間に、単純なものからはじまったら終わりなき形、最も美しく最も素晴らしいものへと進化してきて、そして進化し続けていることに。
(著者訳)

 ダーウィンは、惑星の運動という法則性をもった長い期間、単純なものから複雑なものへの進化が続けていること、そこには壮大な生命観があると「種の進化」ではまとめています。
 同じことが、地質学でもいえます。
 地球は、軌道上にあったEコンドライトと呼ばれる揮発性成分を含まない素材からできました。地球も最初は、石の固まりで、大気も海洋もない単純なものからスタートしました。その後、太陽系の惑星運動の変動により、小惑星帯やその外側にあった、揮発成分を含んだ炭素質コンドライトの軌道が乱され、地球や月に多数飛来し爆撃しました。その結果、地球に揮発成分が運ばれ、大気や海洋ができました。そして、生命の合成もはじまりました。
 「惑星の重量の普遍法則に従って」、単純なものから「最も美しく最も素晴らしいものへと」変化してきました。「かくのごとき地質観」は壮大だと思います。そんな地質観へ、少しの独創性を加えて眺めていこうと、著書では企てています。成功したかどうかは、後に評価されちえくでしょう。

【余談】
 グールドの渾身の遺作「進化理論の構造 The Structure of Evolution Theory」(上巻:808ページ、下巻:1120ページ)があります。しかし、まだ読んでいません。大著でもあるのですが、退職後の楽しみにとってあります。もうひとつの大著「個体発生と系統発生: 進化の観念史と発生学の最前線」(649ページ)もとってあります。次は、グールドのライバルであり、盟友でもあったドーキンスが控えています。

・執筆に専念・
3月になり、集中講義があり、ばたばたします。
その傍ら、著書2冊の執筆を継続しています。
当初予定より、かなり遅れています。
1月中旬から、投稿した論文で分割の指示があり、
3編に分けて、そのうち2編を投稿しました。
1編を独立した論文として完成しました。
それを書いている内に、このエッセイで述べた
新たなアイディアが湧いてきたので
それも論文にしました。
著書の執筆のスタートが、一月ほど遅くなりました。
それらの論文を改変し、新たな論文を書いたため
著書の内容も充実したものなりそうです。
この著書の執筆は、まだまだ時間かりそうですが、
ライフワークのまとめとなります。

・宴会・
大学では、通常の宴会が催されるようになってきました。
卒業祝賀会、教職員の送迎会、永年勤務者表彰
など、いろいろと続きました。
4月には歓迎会もあります。
やっと、コロナ禍以前に戻ってきました。
しかし、宴席での対話がなんとなく、
まだまだぎこちなく感じるのは
私だけでしょうか。

2024年2月1日木曜日

265 複雑な連環:地球形成のシナリオ

 地球形成の新しいモデルが、提唱されてきました。そのモデルは、これまでの課題を解決できました。そこには複雑に絡み合った条件が、関係し合っていました。少々複雑ですが、地球形成の最新のシナリオを紹介しましょう。


 現在、生命の起源を考えています。生命起源は、地球の初期に起こったはずです。なぜなら、最古の化石で確実なものは35億年前で、生命の痕跡は41億年前まで遡れます。古い時代に生命は誕生していたので、生命起源には初期地球の状態が重要な前提条件となるはずです。地球の起源、あるいは初期の状態を把握して置く必要があります。
 地球形成には、いくつものアプローチがあるのですが、地球外の証拠や制約条件から考えていく方法と地球内に存在する地質学的証拠から考える方法とがあります。
 地球外の証拠として、他の天体や隕石の情報が使えます。金星や火星は、地球と同じ頃にできました。火星には探査機が降りて調査しています。月でも探査も進められ、アポロ計画による岩石試料もあります。月の情報も有効になります。
 太陽系外の惑星の情報から、惑星系は非常に多様だとわかってきました。多様な惑星系の形成過程が説明できるモデルがあれば、地球もその一環で形成されたと考えられます。「タンデムモデル」が最近提唱されました。2つの軌道上だけで惑星が形成され、内側で岩石惑星が、外側で氷惑星とガス惑星ができます。形成条件により、多様な惑星系ができることがわかってきました。
 惑星形成のシミュレーションで、形成終盤に原始惑星同士の衝突「ジャイアントインパクト」が起こり、地球にもあったと考えれています。激しい衝突ですが、短期間(数ヶ月から数年)で月が形作られました。衝突は、45.2億から44.4億年前とされています。できたての月も地球にも、表面には、岩石がどろどろに溶けたマグマの海がありました。
 月の表面は侵食はなく、できたときの状態をよく保存しています。表面のクレータの研究から、激しく隕石が衝突した時期があることがわかりました。「後期重爆撃」と呼ばれ、43.7億から42億年前に集中的に起こったことがわかってきました。
 さらに、惑星系形成の後半には、ガス惑星(木星と土星)の軌道が不安定になり、太陽に向かって落ちていき、地球軌道付近にまで入ってきて、その後外にでていくことがわかってきました。
 隕石は、小惑星帯から飛来していることが軌道計算からかっています。隕石は、小惑星帯の情報をもっています。隕石という実物があるので、化学組成を調べたり、年代測定ができます。隕石から、太陽系形成時、太陽系全体が固体すべてが溶ける熱い状態から、冷却されて固体ができた過程がわかりました。それらの固体が、惑星の材料となりました。一部が小惑星帯に残り、太陽系の材料の化石ともいえる隕石もあります。
 隕石の中に、炭素質コンドライトと呼ばれるものがありました。この隕石はもっとも古い45.6億年前の年代で、地球の大気や海洋をもたらしたという証拠もあります。ですから、炭素質コンドライトがあれば、大気も海洋も固体地球もすべてそろうと考えられ、地球や惑星の材料とされていました。
 惑星形成の時、太陽の位置から、近いところは熱く、離れると冷たい条件となります。その条件を見積もっていくと、地球軌道では、揮発成分(大気や海洋の材料となるもの)をまったく含まない岩石しかできないことわかりました。小惑星帯にある天体の分布でも、揮発成分を含んだもの(炭素質コンドライト)は外側にあり、内側には還元的で揮発成分を含まないもの(Eコンドライトと呼ばれるもの)になっています。原始地球の材料には、揮発成分がありませんでした。大気も海洋もない「裸でドライ」な初期地球ができたことがわかってきました。
 そうなると、いつどこから揮発成分が供給されたかが問題になります。このとき、月の後期重爆撃が参考になります。月で起こった重爆撃は、当然地球でも起こったはずです。この重爆撃は、小惑星帯にあった天体で、その中には炭素質コンドライトの成分も含まれていました。
 ガス惑星が現在の軌道に戻る時、小惑星帯を天体の軌道をかき乱すので、そこから太陽系の内側に落ちてくる天体も多数あったことになります。それが、後期重爆撃となりました。爆撃した天体の中に、炭素質コンドライトがあり、地球に大気と太陽をもたらしたことになります。
 地球内部から情報としては、最古の岩石を探していくと、40億年前ころまでのものは見つかりますが、それ以前のものは見つかりません。ただし、鉱物(ジルコン)では、40億年前より新しい堆積岩の中にある砂粒として見つかります。43億年前までのものです。つまり岩石としては残されていないが、鉱物片としては、かろうじて表層のどこかに残されていたようです。
 以上のことから、地球形成の新しいシナリオができました。
 地球は還元的な天体としてできました。表層は裸でドライなものでした。45億年前ころ、すでにできていた地球に、小天体が衝突しました。その結果、月ができ、地球もリセットされた状態となりました。月にも地球にもマグマの海ができ、やがて冷えてきます。揮発成分はまだないので、裸でドライの状態でした。43億年前ころ、小惑星帯にあった揮発成分を含んだ小天体が、地球や月に多数飛来します。その小天体から大気や海洋になる揮発成分がもたらされました。
 以上の地球形成の新しい形成モデルとなります。非常に複雑な条件が絡み合って、新しいモデルはできています。シンプルに考えられればわかりやすいのですが、真実は簡単だとは限りません。生命誕生のシナリオも、この延長線上で考えなければなりません。時間的には非常に厳しい条件(1億年程度の短時間)で形成されなければなりません。本当にこのモデルでいいのでしょうか。

・本の執筆・
2月になりました。
後期の講義が終わったので、精神的には開放感があります。
大学の行事としては、重要な次々とあります。
しかし、束縛時間は限られています。
校務さえ順調にこなしていけば
研究時間がたっぷりと確保できます。
今年も、2月から3月かけては、
本執筆を集中的に進めてこうと考えています。

・雪まつり・
札幌の雪まつりが、今週末からはじまります。
先日も札幌駅前のデーパの地下に入ったら、
非常に多くの人がいました。
ですから、雪まつりには、もっと多くの人が
訪れることになりそうです。
子どもが小さい時は
雪まつりにもでかけていましたが、
今では夫婦でテレビで特集を見る程度です。
長時間外にいるのは、寒さが堪えます。
歳ですから仕方がありませんね。
健康を最優先にしていましょう。

2024年1月1日月曜日

264 色とりどりの時間

 明けましておめでとうございます。一年のはじまりに、時間について考えました。見方により、いろいろな時間がありそうです。色とりどりの時間があることを見ていきましょう。それにしても、時間は難題です。


 元旦には、新しいカレンダーや手帳、日記に変更したりする人もいるでしょう。一年の計画を考える人もいると思います。昨年がいい年でなかったなら、今年こそはと心機一転を考える人もいるでしょう。昨年がいい年だった人ならば、今年も同じように過ごせるように願うでしょう。
 暦で一年は元旦からはじまり、大晦日で終わります。12月31日24時、あるいは1月1日0時をもって、年号が替わります。同じ年号でも、ある人にとっては大きな節目の年になり、ある人にはいつもと変わりない年もあります。同じ時間の流れも、人によって違って見える「異なる時間」となります。
 人は、毎年ひとつずつ年齢が増え、変化していきます。そのため、同じような似た時間であっても、同じ時間では決してありません。だから、新たな年が迎えることに期待できるのです。子どもは、精神的にも肉体的にも、日々は成長しています。若者も、心身ともに着実に成長しています。ただし、成長の程度は、努力によって変わってきます。年をとってくると、成長は少なく、衰えが目立ちます。高齢になると老化が進行していきます。同じ時間でも、過ごし方によって変化の度合いは変わってくるはずです。成長や変化という考えを導入すると、人に実際に流れている時間は、同じものではなくなります。「不可逆な時間」があることがわかります。
 とはいっても、日常生活では、月、週、日などで区分されて、繰り返されます。曜日や一日の生活にはルーティンがあり、曜日や一日のパターンが同じように繰り返され、巡っているようにみえます。時間が循環しているように見えます。日常生活では「循環する時間」があります。
 話を変えて、自然科学で扱う時間を考えていきましょう。
 そもそも物理学的には、時間は厳密に定義され、時計のように正確に刻まれ、流れていきます。また、物理の法則、例えば運動方程式に現れる時間には、流れる方向は関係はありません。どの向きにも時間が流れても、法則に変化はありません。「可逆な時間」となっています。可逆な物理的時間は、「現在」を原点として、どの方向に時間軸はのばせて、行き来も自由です。過去も未来も関係なく、自在に行き来できる「無色透明な時間」があります。
 化学反応のように、変化を伴う現象では、一方向にしか進みません。時間を循環させようとしても、変化したものを同じ状態に戻すことはできません。逆向きに反応させようとすると、エネルギーを注ぎ込まないとなりません。つまり、時間の流れが、一方向にしか流れない「不可逆な時間」になっています。
 自然界に存在するものに、変化が起こらない不変のものはあるでしょうか。対象となる自然は、地球上の存在、もしくは宇宙空間内の存在です。地球は今から45億年前にできたことを、宇宙空間に存在するすべての物質は、ビックバンによってはじまったことを、科学は明らかにしました。物質だけでなく、時間も空間も、すべてがビックバンからはじまりました。この世の森羅万象に、はじまりがあることになります。現在、どんなに不変に見えるものがあっても、地球やビックバンという「時間のはじまり」がありました。
 自然界には、「時間のはじまり」から流れる「不可逆な時間」があり、そこには熱力学の法則が適用できます。エントロピー増大の法則(熱力学第二法則)で、どんなに同じ状態に見えても、時間がたって状態が変化すれば、エントロピーが変化していることになります。
 以上のことから、物理法則のような抽象化された不変には、可逆の時間、無色透明の時間が存在しています。一方、人や生き物、変化を必然的に伴っている現象、自然界には、「はじまり」があり、そこから不可逆に流れる時間です。
 社会生活での時間を考えると、一週間や一日の似たルーティンで「循環する時間」あるように見えますが、取り戻せない時間があることも知っています。ある日の失敗を、翌日に取り返すことはできません。ある週にサボったたら、その一週間分のスケジュールが遅れてしまいます。似た時間が繰り返されていますが、逆戻りはしません。そこには「不可逆な時間」が流れていることになります。
 このような不思議な時間をみていくと、同じようなところ(一日、一週間、一年など)を巡る「螺旋状の時間」があり、螺旋の方向にも別の時間軸として不可逆な時間があるように見えます。
 本来であれば、この螺旋状内の時間軸と螺旋軸方向の「螺旋を貫く時間」は、階層の異なったものになるはずですが、それぞれの時間には区分はなさそうです。「階層化できない時間」なのでしょうか。時間を巡る思索を進めると、混乱していきます。これについていは、今後も考えを深めていきたいと考えています。
 時計によって時間を計測していると、無色透明な循環する時間があるように見えますが、不可逆な螺旋状の時間と、それを貫くはじまりがあり、階層化できない時間もあります。時間は不可解な存在です。

・あらぬところへ・
元旦のエッセイなので、
それらしき内容にすべく書きはじめました。
現在書いている論文では、
地球や生命の「はじまり」について考察をしています。
その一番中心の概念を
今回のテーマにするつもりで書きはじめました。
その書き出しは
「歳のはじめに、「はじまり」について考えていきます。」
というものでしたが、
まったく違う内容になっています。
このエッセイでは、事前に
いくつかのネタを用意しています。
「はじまり」と「時間の階層化」などがありました。
1月なので、「はじまり」にして書きはじめました。
詳細については、よく考えるべき内容もあり、
書きながら考えていくものもあります。
「はじまり」というテーマも
考えながら書くつもりではじめました。
ところが、「時間の階層化」へと移っていきました。
実は、「時間の階層化」は全く違った内容を
思い描いていたテーマなのですが
あらぬところにたどり着いてしまいました。

・正月休み・
このエッセイは、年末に書いて配信しました。
長い冬季休業期間があったので
落ち着いて考えることができます。
そんな静かな時間に考えても、
まだ混乱しています。
この混乱を整えるためには、
十分に考える時間も必要なようです。
正月三ヶ日はゆっくりと休んで
頭をリセットしましょう。
いい考えが浮かんでくるかもしませんね。