2009年8月1日土曜日

91 諦めない:日食

 7月22日は、46年ぶりの日食でしたが、皆さんは、ご覧になれたでしょうか。メディアが散々騒いたのですが、天気が悪く見ることができなかった地域も多かったようです。私は、幸い観察することができました。日食を見ながら、諦めない気持ちが大切だと思いました。

 2009年7月22日は、皆既日食が日本の南の海上で起こりました。本土の多くの地域でも、部分日食が見ることができるはずでした。日本の陸地で見られる皆既日食としては、46年ぶりの出来事だったからでしょうか、メディアが大きく取り上げていたので、多くの人が皆既日食を知っていました。
 私は、皆既日食が見られる(皆既日食帯)ような南方に出かける余裕はないので、地元で部分日食を見るつもりでした。幸い、1校目の講義が10時40分に終わるので、その直後から観察すれば、最大の食には間に合うはずです。前日までに、撮影する場所の候補を、2箇所ほど考えて、撮影の準備をして、当日に臨みました。
 私は、天文観測を趣味にしていません。ただ、日食という天文現象を観察したいとは思っていただけでした。天文写真を撮る趣味もないのですが、ある撮影をしようと考えていました。木漏れ日を撮影するつもりで準備をしていました。天気さえよければ、ピンホール効果で、変わった木漏れ日がとれると期待していました。以前、部分日食のときに、撮影に挑戦したことがあたのですが、なかなか気に入った写真が取れずに、今回、再度挑戦しようと考えていました。
 ところが、当日は朝から天気が悪く、空全体を、雲が覆っていました。小雨もぱらぱらと降っていました。わが街での日食観測は、今回はだめかと半分あきらめていました。
 この日は、日本列島全域で天気が悪く、日食を見れた人は少なかったのではないでしょうか。まして、わざわざ皆既日食帯に高い料金を払って出かけていった人にとって、天気が悪いときの落胆は大きさは、私どころではなかったでしょう。
 さて、日食とはどうして起こるかご存知でしょうか。メディアでいろいろ解説されているので、知っている方も多いはずです。科学教育として考えると、このように宣伝された天文現象は、効果絶大です。
 地球と太陽、月が、一直線に並んだ状態になったとき、日食が起こります。太陽は離れているので、常に直線の端に位置します。ところが、地球と月は、どちらも端になりえます。
 月が端になって太陽-地球-月として一直線になると、月食が起こります。端にいった月は満月になり、大きな地球の影に入ることがあります。これが月食です。ですから、月食は地球の夜の側では、すべての地域で見ることができます。
 皆既月食は1年に1回程度起こる現象なので、多くの人に見るチャンスがあります。そして、その継続時間も結構長くなります。月の半径(1738km)と比べて地球の半径(6378km)は約4倍もあり、大きな影になるからです。皆既月食の場合では、月は1時間40分ほど消え、前後の部分月食も含めると最大で3時間40分の天文ショーとなります。月食な毎年のように起こり、夜の時間帯にあたった地域の人はすべて見るチャンスがあります。
 日食は、太陽と地球の間に月が入り、太陽-月-地球と一直線に並ぶことです。一直線に並べば、月の影が地表に落ちることがあります。地球は、月の影より大きいので、影が地表を横切ることになります。ですから、その影の下だけで、日食が見られることになります。つまり、日食は、地球では一部の地域でしか見られません。
 月と太陽の大きさは、地球から見たとき、ほぼ同じになります。太陽(半径70万km、距離15000万km)は月(1738km、38万km)より、400倍ほど大きいのですが、400倍ほど遠くにあるために、見かけ上ほぼ同じ大きさに見えます。これは、偶然の賜物です。
 ただし、「ほぼ同じ」であって、正確には違いがあります。月の軌道は楕円軌道で、地球から見たときの大きさは、14%も変化します。ちなみに太陽の大きさの変化は2%です。ですから、月の位置が重要になります。大きさが同じか月の方が大きくなると、太陽が完全に隠れ皆既日食になります。太陽の方が大きくなると、太陽の光が漏れる金環日食となります。
 ところが、月食と比べると、日食を見るチャンスは、かなり少なくなります。皆既日食は100年間に66回、金環日食は77回、金環皆既日食(金環から皆既に変わるもの)11回となっています。なおかつ月の影に入った地域だけでしか見ることができません。ですから、皆既日食や金環日食は珍しいものとなります。
 ところが、部分日食は100年間に84回も起こります。また、皆既日食帯や金環食帯の周囲では部分日食になります。あわせると、毎年のように日食は起こっていることになります。もちろん、限られた地域ですから、珍しいには違いありませんが、一つの地域にいたとしても、部分日食なら、一生のうちに何度か見るチャンスは訪れることになります。
 私は、今まで2度、部分日食をみています。いずれも、たまたまその地に居合わせただけなのですが、一つはカナダで、もう一つは、神奈川で見ました。
 カナダでは、地質調査に出かけていたとき、偶然出合った部分日食でした。その時期、ロッキーで大規模な山火事があり、何日もにわたって燃え続けました。その煙で、カナダの内陸部の大気がうっすらと黄色っぽく霞んでいました。黄色い空で、太陽を直接見ても、それほどまぶしく感じないほどでした。
 一緒に調査をしていたカナダの地質学者が、「日食だ」というので、空を見上げると太陽が欠けていました。普段の気象状態なら気づかなかったはずです。しかし、煙で光量が落ちていたため、目で見て太陽の形が確認できたのだ幸いしたのです。私は、あわててカメラを向けて、何枚かの写真をとることができました。これは、私の最初の日食との出会いでした。
 2度目は、予報によって事前に部分日食が起こることを知っていました。当日は晴れていましたので、部分日食とはいえ、直接太陽を見ることも、撮影することもできません。そこで、ピンホール効果を利用して木漏れ日を撮影することにしました。
 ピンホール効果とは、ピンで開けた穴から光が入ると、焦点距離が合ったところに、景色が写ります。この原理を利用したのが、ピンホールカメラです。太陽光がピンホールを通ると、太陽の円い形がそのまま映ります。木漏れ日の光が、すべて丸くなっているのは、このピンホール効果よる太陽の形だったのです。もし部分日食であれば、欠けた円、つまり三日月形の木漏れ日が多数できるわけです。
 神奈川の部分日食では、小さな丸い穴を開けた紙を用意して、ピンホールの映像を撮影し、木立の木漏れ日を撮影しました。でも、背景がよくなかったり、ピントが合わせづらかったりで、思うような写真がとれず、残念な思いをしました。
 今回は、私にとって3度目の部分日食との出会いでした。2度目の部分月食でうまく撮影できなかったので、三日月の木漏れ日を、今回は撮影したかったので、準備していました。小さな丸い穴を開いたお菓子や紙を用意して、程よい木立のあるところで、アスファルトに木漏れ日が落ちるところで撮影する予定だったのです。
 残念ながら、当日は、曇り空でした。半分あきらめながらも、撮影予定の場所に向かいました。最初の候補地は草刈をしていたので諦めて、第二の候補地で撮影をすることにしました。二箇所予定していたので、それが効を奏しました。
 曇り空だったのですが、見上げると、太陽のあたりは雲が薄くなり、雲越しに太陽を見ることができました。諦めずに撮影するつもりで、出かけたのがよかったのです。直接太陽を長く見ることはできませんでしたが、撮影する瞬間だけは覗くことはできました。曇りが幸いして、カメラで直接太陽を撮影することができました。同行した家内は、ビデオで撮影することができました。
 途中、2度ほど、雲が晴れたので、ピンホール効果を撮影しようとしたのですが、光が弱く、肉眼でかろうじて欠けた円の木漏れ日を確認できたのですが、写真が取れるほどではありませんでした。
 今回、残念ながらピンホール効果の撮影できませんでしたが、欠けた太陽を直接撮影することはできました。でも、諦めることはありません。チャンスは生きている限り何度もあります。2011年6月2日には、北日本を中心に部分日食があります。2012年5月21日には、金環日蝕が、今回より北側の、トカラ列島、屋久島、種子島、九州地方の一部、四国地方の一部、近畿地方南部、中部地方南部、東海地方の大部分、関東地方の大部分、東北地方南部でみることができます。もちろん、その他の地域では部分日食が見ることができます。
 諦めることなくチャンスを待っていればいいのです。雨や曇りはだめですが、かすんでいるようなら直接撮影、晴れていれば木漏れ日を狙えばいいのです。特別な天文撮影の道具がなくても、私は、このような写真を楽しんでいます。皆さんも、このような楽しみ方も体験されてはいかがでしょうか。

・撮影・
木漏れ日の撮影の予定だったので、
標準レンズと広角レンズだけを準備していました。
家内はビデオ撮影用に三脚を用意していました。
そしてズームを最大にして撮影していました。
結構はっきりと撮影できていました。
私は、太陽を直接撮影できるとは思っていませんでしたので、
望遠レンズも三脚も用意していませんでした。
ズームレンズで最大の望遠側の100mmで撮影をしていました。
トリミングをすれば、けっこうきれいに映っていました。
たくさん撮影したので、
日食の時間変化を示せると思うのですが、
手持ちで撮影したので、中心がずれています。
それを補正しながらトリミングしたいのですが、
なかなかうまく重なりません。
現在、その作業をどうするか思案中です。
まあ、終わってからもいろいろ楽しませてもらっています。

・旅行・
今年度から、8月に定期試験がずれこみ、
採点と集計作業で、お盆明けまで忙しくなります。
お盆開けには子供たちの小学校がはじまります。
そのため、家族旅行がなかなかできないので、
講義の終わりと試験の隙間をぬって、
今日から4日ほど、道内を旅行します。
ただ、エルニーニョの影響で、
北海道は天候が悪く、どうなるか心配です。
今回の目的は、海と川で遊ぶこと、そして山登りです。
観光地ではないので、もし天気が悪いと
やることがなく困ってしまいますが
天候ばかりはどうしようもありません。
4日間、のんびりとしましょう。