自然科学は、自然を対象にしています。そのため、自然科学では、自然物をよく見ることから、自然から学んでいくことになります。そのような簡単なことが、もっとも重要な姿勢ではないでしょうか。
自然科学は、自然やその中の事物を対象にしています。地質学では、野外で露頭や地層を観察し、記載することからはじまり、その過程を探求していきます。自然科学では、自然そのものを扱っているため、自然を重視しなければなりません。しかし、研究に深く入り込んでいくkと、ついついそんな当たり前のことを忘れてしまいます。
地質学者のアガシー(Louis Agassiz、1807-1873)は、1837年、スイスアルプスで見られる過去の(山岳)氷河の痕跡から、現在よりずっと巨大が氷河があったことを発表しました。迷子石や氷河擦痕、モレーンなどの痕跡、U字谷などの地形的な特徴を、氷河の証拠としました。現在は存在していない過去の現象を、現在に残された証拠から検証していきました。
1840年「氷河の研究」では、氷河期がアルプスだけの現象ではなく、少なくとも北半球の広い範囲に及ぶ、地球規模の気候変動とだという仮説を示しました。1847年の「氷河期の体系」では、より広範な地質学的根拠を集めて、「氷河期」を体系化していきました。
アガシーは、1846年にアメリカ合衆国に渡りました。アメリカでは、ハーバード大学に、比較動物学博物館を設立し初代館長を務め、科学の普及と教育制度の発展にも尽力しました。実物教育(Object Teaching)を重視していて、観察することの重要性を体験させる教育方法でした。その考えは、アガシーの教える教室の黒板の上に
Study nature, not books
(自然に学べ、本ではなく)
と書かれて掲げられていたということでした。
アガシーは、ダーウィンの進化論にもっとも反対した人物としても知られていました。19世紀の科学界における知的なライバルになっていました。氷河が地球を覆ったことで多くの生物が絶滅し、その後に新しい創造されたと考えました。その証拠と考えたのは、氷の中に閉じ込められた状態で発見されるマンモスの遺骸でした。
le silence de la mort s'étendit sur la nature entière
(英文:The silence of death spread over all nature)
(死の沈黙がすべての自然を覆い尽くした)
と書きました。
アガシーは、氷河が地球を覆ったことで「死の沈黙」の時代となり、その後、新しい創造があったと考えました。アガシーは、信仰を重んじており、生命誕生は神に創造によるもので、種は不変で静的で秩序だったものだと考えました。化石の記録は断続的になっていると考えました。ダーウィンの進化論の批判は、宗教的背景もあったのでしょうが、自身の化石研究にもどつく観察がありました。
ダーウィンは、生命はひとつの共通の祖先から連続的に変化(進化)してきたもので、生物種は動的で、変化には偶然(自然選択)が作用すると考えました。化石記録に断続性があるのは、「記録が不完全」であるためとしました。
魚類化石を研究していたアガシーは、化石記録には、種と種の中間的なものが見当たらないこと(ミッシングリンク)を重視しました。それは、氷河期など地球規模の天変地異が起こり、その後、神が新しい種を創成した証拠だと考えました。
同じ情報を、ダーウィンは記録の不完全さ、アガシーは種の不在とその後の神による創成と考えました。化石記録の断続性が、両者の大きな論点となっていました。
アガシーが提示した、中間化石がないこと、化石種の急激な変化は、古生物学や生物進化において、現在でも大きな問題になっているものです。断続平衡説なども提唱されていますが、まだ解決されていません。
アガシーは、最後まで、進化論は誤りだと主張していました。ダーウィンもアガシーを「非常に優れた観察者」として尊敬していたようで、アガシーの地質学や魚類学のデータを多用していました。ところが、アガシーの教え子たちの多くは、ダーウィンの進化論を受け入れ、アガシーの元を去っていきました。アガシーの信仰による生命誕生や生物進化への考えは、現在では受け入れられていません。
アガシーの自然への向かい方として、Study nature, not booksという姿勢は重要だと思います。本に書かれていることは、既知のことです。新たな発見は、本にはなく、自然から生まれてきます。
学生時代、岩石を顕微鏡で観察する授業がありました。1枚の薄片(1×2cmほど)を、何日にもわたって顕微鏡で観察していくことになります。ひとつひとつの鉱物を見分け、鉱物同士の関係(組織)から、その鉱物がどのようにしてできてきたのかということ推定していきます。いろいろなことを考えながらスケッチしていました。連日、目がしょぼしょぼするほど顕微鏡を覗いていました。時間かけたお陰で、代表的な岩石の組織や鉱物を見分けられるようになりました。
ここでスケッチをするという行為は、線画で描写をしていくことになります。色も白黒の線画となります。スケッチの時には、常に何を省略し、何を重視するのかを考えています。重要な部分は詳細に描いていきます。実際に見ているものとは似てはいるのですが、考えが反映された一種の思索図になっていきます。同じようなことが、野外調査での露頭のスケッチにも起こります。
この時、自然からの学びが起こっていると思えます。鉱物を見分けること、組織の特徴の学びは、本からの知識が必要です。しかし、スケッチとして取捨選択している時、自然からの学びが反映されていきます。日々、多くの研究により新知見が蓄積され、体系化されいる時代になっています。本から学ぶこと
Study nature, study books
も重要です。しかし、学んだあとには、既知の知識である本から逸脱して、自然から新しいことを見出していくことこそが重要でしょう。ですから、最後には本から離れて、創造性を発揮しなければなりません。やはり、
Study nature, not books
となるのでしょう。
・証拠の不完全さ・
アガシーは、スイス出身で、スイスで実績を残した後
1846年にアメリカ合衆国に渡りました。
アメリカでも偉大な科学者として
発言力も大きくなっていました。
そのため、ダーウィンの進化論への反対論者として
大きな発言力をもっていました。
アガシーのような自然観察者が
地層からえられる証拠の不完全さに
気づかなかったのでしょうかね。
・術後の回復期・
9月中は、術後の回復が芳しくなく
体調もすぐれず、安静にしていたの、
ほとんど自宅内で過ごしました。
幸い、妻が元気でいたので
家事や身の回りのことを
すべてやってくれていたので
ゆっくりと養生できました。
感謝しています。