2018年8月1日水曜日

199 誤謬の混入:目の前の真実

 ファクトが目の前にあっても、脳が見ようとしなければ、フェイクが頭の中で形づくられます。そして他者の批判に、自身の主張をオルタナティブな真実と弁護します。悪循環です。真実は、目の前にあるのです。

 アメリカのトランプ大統領が使った言葉で、フェイク・ニュース(fake news)やオルタナティブ・ファクト(alternative fact)という言葉が、メディアでよく聞ききました。
 フェイク・ニュースとは「偽のニュース」という意味です。これは、トランプ大統領が、自分に批判的な報道を「フェイク・ニュース」だと何度も口にしたり、2018年1月、就任1年目に「フェイク・ニュース大賞」を発表して話題にもなりました。
 オルタナティブ・ファクトとは、「代替の事実」が直訳になり、「もう一つの事実」などという言葉も使われています。オルタナティブ・ファクトは、トランプ大統領就任式(2017年1月)の群衆の数が、空撮写真でみると「過去最少だった」と報道されました。それに対して、スパイサー・ホワイトハウス報道官が「観客は過去最多だった」と反論しました。2017年1月、その発言が「明らかな虚偽」ではないかというメディアのインタビューに、コンウェイ大統領顧問は、「嘘ではなく、もう一つの事実だ」と反論したことで有名になりました。そのために、大統領側は、いろいろな理由を示したのですが、メディアがそれらをすべて論拠を示して否定していきました。
 トランプ大統領は懲りることなく、重要な影響のあるよう政治や外交判断をいまだにSNSで発信しています。民主主義を無視した、非常に乱暴なやり方です。似たような乱暴な議論の進め方が日本の政府でも起こっているように見えます。かなり不安です。
 今回のテーマは、トランプ氏側の主張の中で、あえて「真実」の部分を抽出すると、「見えているものだけが、真実ではない」という点ではないでしょうか。「見えないものは、存在しない」というのは、写真に写っている人の数のように見るべき対象が限定されていれば、それは真か偽かは判断できます。一般化して「見えないものは、存在しない」と定言にすると、明らかに偽となります。科学は、見えないものでも、存在していることを証明しています。
 例えば、小さいもの、細菌やウイスルなどは、肉眼では「見えない」のですが、光学顕微鏡や電子顕微鏡などを用いれば、その姿かたちを「見る」ことができます。今では、高倍率の電子顕微鏡を用いれば、原子を一粒一粒を「見る」ことができます。
 重要なことは、肉眼では見えないものであっても、道具や装置を用いることで、「見える」視覚の範囲を拡大することできます。小さいものだけでなく、遠くのものも性能のいい望遠鏡を使えば見ることできます。また、人の代わりに探査機を送り込むことで、深海や他の天体(月や火星、冥王星、地球近傍小惑星リュウグウなど)を「見る」ことができます。
 私に「見えない」ものが、子どもが「見えた」経験があります。地質見学(巡検と呼ばれています)に参加していたとき、学生時代は火成作用に興味あったので、地層や化石にはあまり興味がありませんでした。だから私は、なかなか化石を発見できませんでした、でも化石に興味のある同級生には見えていました。また、博物館内の観察会で、館の石材を見学しているとき、「化石が見つからないとされていますが、頑張れば見つかるかもしれません」といって案内しました。私は、この石材から見つからないという先入観を持っていました。しかし、なんと子どもが小さな巻き貝の化石を発見しました。見る気がない人には、真実は見えないのです。
 素直に「見れ」ば、事実だとだれもで判定できるのに、トランプ陣営の人のように、その事実を見ようとしなけば「見えません」。皆さんにも、似たような経験があるのではないでしょうか。そこに視覚情報、正しい情報があったとしても、それを素直に見よう、判断しようとする気持ち、姿勢がなければ、真実が見えなかったり、偽に見えたりするのでしょう。
 これは、脳が見ていることに起因しているのです。脳が見ようとしないものは、視覚に情報が入っていても見えせん。脳は、持ち主の考えて簡単に「オルタナティブ・ファクト」を見てしまいます。
 このような誤謬は、人の脳には簡単に入り込んでいます。常識、当たり前だ、面倒だ、などが、誤謬の入り口はささやかなものでしょう。ですから、素直に、ありのままを見ることが、誤謬を除く一番簡単な方法でしょう。
 誤謬の混入は、視覚だけではありません。すべての感覚器官で同じような誤謬が入り込んでいる可能性があります。例えば、マジシャンは、このような視覚トリックを意図的に操作しています。VRのアトラクションでは、イスを傾けることで平衡感覚を惑わして、スリルを味わう仕組みが取られています。ゲームセンターのレーシングカーのアトラクションなども、体勢感覚の錯覚を操作しています。聴覚も、左右の音でステレオ効果をきかせれば、目の前を車が通り過ぎたように思えます。
 これらの例は、感覚器官を通じて情報は正確に取り入れているのですが、脳が騙されているのです。それが、エンターテイメントや楽しみであれば、問題はありません。ですが、民主的な結論、重要な政治判断、より確かな規則性などを見つけたいときには、自分の意を反映した脳が、邪魔をすることがあるはずです。そんな誤謬を最小限にするために、素直に「見る」必要があるでしょう。自身の考えも重要ですが、「見えていること」にこそ「真」があるはずです。

・自然災害・
今年は、西日本では、地震、大雨、猛暑、
台風の逆行など、例年とは違った気候で
自然災害が多発しています。
北海道も日照時間の短い冷たい初夏から、
一気に蒸し暑い夏になったり、
変動が激しいようです。
自然の変化に一番影響を受けるのは農業でしょう。
北海道では大規模農場が多いので、
その被害は全国的に影響を受けます。
まだあまり影響のニュースを聞かないので
ひと安心ですが。

・定期試験・
現在大学は、前期の定期試験期間中です。
毎年思うのですが、祝日などのやりくりで
講義が終わるのが7月末になるので、
停止危険が8月に入ります。
北海道でもこの時期は一番暑くなります。
試験の条件としては最悪の時期です。
それでもスケジュールをこなさなければなりません。
大学は文科省の指示に従っています。
規則ではそうなっているのですが、
もう少し学生の立場でものごとが進みませんかね。