ダーウィンの「種の起源」は有名な著書ですが、執筆に至るまで、2年ほどの準備をしています。考えをまとめ、重要データを集めるために、ノート作成しています。ノートには、進化論を思いついた瞬間も残されています。
ダーウィンは、生物の進化についてノートを取りながら、考えをまとめていきました。これらのノートは、「Transmutation Notebooks(種の変化ノート)」と呼ばれており、Notebook Aから Eまで5冊が残されています。その概要を見ていきましょう。
Notebook A(1837年5月~7月)は、ライエルの地質学に関する考えに基づいて、火山活動、地殻変動、化石の層序、動物における種の変化などについての考えが記述されています。
Notebook B(1837年7月~1838年春)には、今回紹介していく「I think」からはじまるメモとスケッチがあります。このノートでは、種の変化について分岐進化による考えを思いつき、考えています。
Notebook C(1838年3月~7月)は、家畜や園芸での品種改良(人為選択)と自然界の種の多様性における環境要因を考えています。
Notebook D(1838年7月~10月)では、マルサスの「人口論」の影響を受け、生存競争(struggle for existence)の概念を思いついています。そこから自然選択の概念が生まれいきます。
Notebook E(1838年10月~1839年春)では、動物の本能、知性、社会行動に関する考察、そして人間と動物の連続性から、人間の進化への考えも芽生えています。本能の変化も「選択」で説明できるという考えも示されています。
ダーウィンは、このように多くのノートをつけながら、2年ほどかけて思索を深め、考えをまとめていきました。その結実として、「種の起源」や「人間の由来」が上梓されていきます。
Notebook Bの36ページには、「I think」と呼ばれる有名な図があります。この図は、生物が共通祖先から生まれ、種が枝分かれしてきたという「分岐進化(branching evolution)」のアイディアを図示したものです。詳しく見ていましょう。
このページの一番上の位置に、タイトルともなるように「I think」と書かれています。その下に図があり、図の右上に、以下の2つの文章が、斜め書きされ、線で囲われています。その文章は、
Case must be that one generation should have as many living as now.
(あるひとつの世代の生物の数が現在と同じであるべきという主張がある。)
To do this & to have many species in same genus (as is) requires extinction.
(これを達成し、(現在のように)同じ属の中に多くの種が存在するには、絶滅が必要になる。)
というものです。
そして、ノートの中央に図が描かれています。この図は、下から上に向かって時間が経過していきます。一番下には①と書かれた一つの種(今では共通祖先と呼ばれるもの)からスタートしていきます。枝が分かれているのは、ある種が他の種に分化していくことを意味しています。枝の先には、A、B、C、Dと書かれた種があり、それらの枝の先端はT字型(線の先端に横棒がついたもの)で終わっています。これは、現在も生きている種を意味しています。先端が線のままで終わっているのは、絶滅した種を意味しています。
図の下にも文章が続きます。これらは、図の説明となっています。
Thus between A & B the immense gap of relation. C & B the finest gradation, B & D rather greater distinction.
(こうして、AとBの間には大きな関係の隔たりがある。CとBの間には細かい連続性があり、BとDの間にはやや大きな違いがある。)
Thus genera would be formed.— bearing relation to ancient types with several extinct forms.
(このようにして、属(generaはgenusの単数形)が形成されることになる。いくつかの絶滅した形態をもった古い型と関係を持つことになる。)
この図で、ダーウィンは、種の進化の過程を考えていきました。枝が分かれが下(早期)ほど、現在に至る種の間の変化は大きく、近い(後期)ほど種の特徴が近いことをいっています。そして、種には絶滅した枝もあることもいっています。種の変化は、連続的で、隔たった種間では属というべき違いが形成されていくことになります。
その原動力は自然選択と考え、現生種に至るまでに、生物界の種数は一定になっているようなので、多数の種の絶滅が起こっていることも指摘しています。そして、すべの生物はひとつの共通祖先(①)から出現してきたと考えている点です。現生種と絶滅種の系統を明らかにしていけば、進化の歴史も探れることにもなります。この図には、ダーウィンの進化に関する重要なアイディアがまとめられており、現在の進化論にも通じるものとなっています。
ダーウィンは、この図に、なぜ「I think」と、タイトルに当たるようにところに、書いたのでしょうか。多分、なんらかの思いつき、ひらめきがあり、「I think」と書き、そして図を書きながら、右上のメモ、そして下段の文章へと考えが進んできたように見えます。
「I think」と書き、図を描いている時、考えが一気にまとまったセレンディピティの瞬間ではなかったのでしょうか。もしそうなら、この「I think」が、種の起源の誕生ともいうべき瞬間の記録だったかもしれません。
種の変化を示す証拠、自然淘汰の証拠、絶滅の証拠、生物界である時期には種数が一定であるという仮定の論拠などが必要になります。そのためには、そろえるべきデータが膨大に必要になっていきますが、その作業をNotebook C以降で進めていきました。
それら膨大なる証拠から論理的に考えた帰結として、生物進化の仮説が生まれてきたのでしょう。その思考過程は現在の科学の営みと同じでした。ただしその結論は、当時の常識、あるいは宗教観を否定することにもなりました。ダーウィンはその道を選択しました。
・科学的姿勢・
ダーウィンのこの進化に至る考えの道筋は、
共通祖先の存在は、聖書の創世記の記述に反し
なりより、生物の進化の概念も聖書の考えに反します。
このような異端になるような考えを
多くの科学的成果(証拠)を集め、
論理的に考えることで導き出してきました。
科学的な姿勢を貫いてきました。
・無理をしないで・
ゴールデンウィークは、北海道では一番いい季節です。
人の少ない地元をウロウロしよとは思っています。
眼の調子が良くないので、
無理をしないで、人混みを避けながら
過ごしていきたいと考えています。
ただ、例年、芽生えの時期には、
植物園と人の来ない桜の多いの場所へ
夫婦でお弁当を食べに出かけています。
今年もいけるといいのですが。