ベーコンは壮大なる学問の体系を考えましたが、死によって道半ばで終わってしまいました。自身が達成できなくても、未来の人が、その体系を育ててくれることに期待していました。
ルネサンスから科学革命へと16世紀末から17世紀にかけて、新しい科学的方法論が生まれてきました。その代表となるのがイギリスのベーコンに端を発する経験論と、フランスのデカルトからの合理主義です。
ベーコンは帰納法を、デカルトは演繹法を提唱し、これらは現在の科学では不可欠な方法論となっています。デカルトの演繹法は「方法序説」の中でまとめられ、それは有名な書となっており、このエッセイでも何度か取り上げました。
一方、ベーコンの帰納法は、「学問の大革新(Instauratio Magna)」という著書でまとめられているのですが、あまり有名ではないようです。その理由は、未完であったためではないでしょうか。
ベーコンの「学問の大革新」の構想は、非常に壮大なものでした。「学問の大革新」は、全体で6部からなるものでした。第1部は学問の区分、第2部は新機関、第3部は自然と実験の歴史、第4部は知性の階段、第5部は先駆あるいは予兆、第6部は第二哲学あるいは能動的科学、という構成になっていました。以下で概要を見ていきましょう。
第1部は「学問の区分」として、既存の学問を批判的に検討し、人間の知的能力(記憶・想像・理性)に基づいて、学問全体を歴史・詩・哲学に分類し、それぞれの分野の現状と欠陥を分析していきました。知識の空白地帯を、探求すべき分野として、今後の学問の再構築の方針を示しました。この内容は「学問の進歩」として1605年に刊行されました。
第2部は、「新機関、あるいは自然の解釈に関する指針(Novum Organum sive Indicia Vera de Interpretatione Naturae)」として有名な著書です。その内容も重要で、従来のアリストテレスの知識獲得の方法(オルガノンなど)に代わって、帰納法を提案しています。イドラ(偏見や先入観)を排除するために、経験に基づく観察と実験を重要視して、帰納法にて客観的な真理に到達することを論じています。この「新機関」は非常に有名です。この著書は1620年に発行され、前著から15年の歳月をかけて執筆されています。力の入れようが伺わられます。
第3部は「自然と実験の歴史」といわれますが、「宇宙の現象、自然誌と実験誌(Phenomena of the Universe / Natural and Experimental History)」ともいわれています。Historyという単語を用いていますが、その意味は「歴史」とも「誌」(記録という意味)と両方に使われています。ベーコンは、自然界のあらゆる事実や現象、実験の結果を網羅的に収集し、整理していこうとしました。帰納的推論の基礎となる、体系的なデータ収集の重要性を示しました。
その構想の一部は、「シルヴァ・シルヴァルム、あるいは自然誌の十世紀(Sylva Sylvarum, or A Natural History in Ten Centuries)」としてベーコンの死の翌年1627年に出版されました。タイトルのSylvaはラテン語で「森」や「森林」と意味し、資料の比喩とも捉えられます。Sylvarumは属格複数形で、「森の」という意味をもっています。ですから、「資料集の中の資料集」や「素材の集積」となります。それを10世紀(1000年分)の期間にわたって試みました。動植物、鉱物、気象現象、物理現象など、多岐にわたる事実が詳細に記録されています。データ収集の重要性を実践した著書となります。
以降は未完ですが、その構想があります。第4部は「知性の階段」で、理論と実践を示そうとするものでした。実際に帰納法を用いて理論を見出し、理論の具体的な実践例を示そうと考えていました。
第5部は「先駆あるいは予兆」で、ここでは帰納しても不完全な状態であったとき、どう研究を進めるかを「予備的な結論」(一種の作業仮説の提示)として示す予定でした。
第6部は「第二哲学あるいは能動的科学」で、究極の目標となる実践的な応用科学の完成を示そうとしました。「第一の哲学」とは、従来の哲学(特にアリストテレスやスコラ哲学など)は、抽象的な議論や観念的な思弁になっており、現実に利益をもたらしていない、不毛だと見なしました。ベーコンの目指す「第二哲学」は、獲得された知識を人類のために応用するためのものでした。そこから彼の有名な言葉「知識は力なり(Knowledge is Power)」が生まれてきます。
ここまで見てきたように、「学問の大革新」は壮大な構想の体系でした。完成できなかったのが残念です。その理由のひとつは、ベーコンは1617年に国璽尚書、1618年からは大法官という高位の役職に就いて、非常に多忙な時期がありました。1621年に失脚して以降は著作活動に入りました。1626年に死亡したのですが、その時までに第3部の一部までが書かれており、そこまでが出版されました。
構想はあまりに壮大で、ベーコン自身も一人では完成できるとは思っていなかったようです。「新機関」の「諸学の大革新の緒言」に、
「たとえ私がこの道を切り拓く努力が、私の生前に実を結ばず、世間に認められなくとも、私は満足である。なぜなら、私は未来(後世)のために種を蒔いているのであり、やがて来るべき時が、これらの種を育てるであろうことを知っているからだ。」
と述べています。自身で完成できなとくとも、その意図や価値をわかっていれば、未来の世代が発展させてくれることを期待していたのです。ベーコンの死後、400年がたちました。私たちは、ベーコンが期待した種を育てているのでしょうか。
・長男帰省・
8月は特別なことはないのですが、
淡々といつものルーティンをこなしていきます。
長男がお盆に帰省します。
家に帰ることもさることながら
サマーフェスティバルにいくことが
重要な目的のようです。
昨年も、暑い中、
一人で2日間、見学にいっていました。
長男の帰省期間中に、
おいしい食事や温泉でもでかけましょうか。
・猛暑への対処・
北海道は、今年も暑い日が続きました。
エアコンを一昨年から設置したのですが、
我が家は大きなストーブで
家全体を温める方式なので、
建物全体が仕切りが少ない状態になっており
エアコンには不向きな作りになっています。
一番長く滞在するLDKにエアコンをつけました。
夜寝る部屋にはエアコンがなく
窓を開け、扇風機をつけることで
対応していくしかありません。
今のところそれでなんと対処しています。