10年以上前のエッセイで、予防原則について書いたことがありました。当時と比べ、状況は全くよくなっていないように見えます。そして今、再度、予防原則について考えました。
2014年1月のエッセイ「144 大局観をもった予防原則」で、予防原則について考えたことがありました。当時は、原発事故のあとの原発再開の是非、秘密保護法の制定などを元に、拙速な行政や施策が気にかかっていました。そこで高所かた大局的に見る必要性を考えていました。現在は、10年前とは状況が異なっていますが、より閉塞感が広がっているように思えます。そんな時期に、再度、予防原則を考えてみました。
予防原則(Precautionary Principle)とは、どのようなものかを、まずは説明しておきましょう。科学は、論理性を重視しているので、証明や検証がされていない結論や方法は採用できません。現状のまま放置、あるいは現在の方法を継続していると、将来深刻な危険性が考えられることがあります。科学的に確実ではない場合時、予防的に措置を講じていこうという考えです。
1970年代の西ドイツで環境政策として採用された原則です。その後、1992年の国連の「環境と開発に関するリオ宣言」では明記されました。環境問題を考える時の基本となっていき、生命や医療の倫理、食品の安全性などを考える時にも適用されるようになってきました。
予防原則とは、安全が証明されるまで危険は避けるために「やめる」考えです。一方、危険だと証明されるまで「やっていこう」という「リスク原則」という全く相反する考えもあります。いずれの原則も、科学では対処しづらい場面での判断の仕方となります。
予防原則は、危険性や被害を未然に防ぐための危険回避ができそうです。ところが、技術や経済の進歩を抑止たり活動を抑制したりすることになり、自由な発展を妨げるという短所もあります。発展と危険を天秤にかけ、判断を迫ることになります。この判断をするのに、今の日本が適しているのではないかと考えています。
かつて日本は、経済発展が著しく進んでいる時、工業化によって公害問題が各地で発生しました。当時は、経済発展を優先され、公害への対処はなおざりにされていました。当時、公害は、人類として初めての経験でもあったので、人的被害を顧みることも少なかったようです。その結果、被害が拡大していき、人的被害が深刻になってきました。そして、遅ればせながら、政策的に公害へ対処が進められました。それはあまりに後手で、被害への対応の不十分でした。
対処を懸命にやったことは、悪いことばかりではありませんでした。対処の産物として、世界に先駆けて公害防止や省エネ、再生可能エネルギーの活用などの技術で、新たな展開を向かえることができました。日本人の得意としていた複雑な技術や繊細な技術の組み合わせることが、この時、開花しました。
経済発展している時は、ジャパンアズナンバーワン(Japan as No.1)ともいわれていたため、マイナスへの対処が遅れました。先端技術を開発し、売る側にいました。そんな時代は遠く過ぎ去り、日本の科学や技術のアドバンテージもなくなり、他国に追い越されてしまい、追いかける体力もなくなっています。現在の日本では、他国の先端技術を享受する側、後塵を拝することになり、不景気による停滞が続いています。
生成AIやICTの先端技術が、世界中でもてはやされています。新しい技術で経済効果が生まれれば、科学技術は限りなく進んできます。そのため、膨大な資金や人材が注ぎ込まれていきます。先発したもの、体力のあるもの、資金力や人材があるところが、先頭にたっていきます。その先に何が起こるのかは不明です。今の日本は、その技術を利用する側、買う側に回っています。
Japan as No.1で日本は栄華を享受した後、公害で手痛い教訓を経験しています。その後も、バブル崩壊で、現在も停滞が続いています。国際的には以前の力を持たなくなってきました。しかし、何事も考えようです。Japan as No.1の頃は、「一番」、「豪華」、「大いなる」などが満足に基準でしたが、今では、「耐久」すること、「ささやか」楽しみに満足できるようになってきました。日本は、耐久の時代、あるいは停滞の経済状態にあります。こんな時にこそ、予防原則を見直す必要があるのではないでしょうか。
技術は物理的に限界がくるまで進んでいきます。それを止めることは無理でしょう。先端技術はやがて使い古された、枯れた技術は、安くなり普及してきます。先端でなくても、そんな技術の恩恵に浴することができるはずです。
普及した技術を組み合わせたり、より繊細にしたりすることで、安価に安全に耐久性を持たせられるかもしれません。アップルでスティーブ・ジョブスがおこなった組み合わせ技術を、日本はもっています。現在の環境問題や温暖化など、忍耐を要する対処ができるのも、日本ではないでしょうか。
経済性や競争のためではなく、立ち止まって対処を進めていく必要があります。世界規模の問題であっても、対処に専念すれば、そこには新たな活路が見出されるはずです。それが将来の糧になるかもしれません。現状の世界規模の問題に予防原則を進められるのは、日本ではないでしょうか。
これは、日本贔屓すぎるでしょうか。
・冬仕様・
今年の北海道は、秋が短いようです。
里から見える山の冠雪も早いようです。
急激に寒くなり、紅葉から落葉へ
一気に進んでいるようです。
朝晩、ストーブがかかせなくなりました。
幸いも、里にはまだ雪は降っていません。
いつ降ってもおかしくない気候です。
コートも冬用、毛糸の防寒具も
身につけるようになりました。
すべてが冬仕様になっています。
・三ノ宮・
先日の帰省で神戸に一泊しました。
宿泊は三ノ宮でホテルをとりました。
神戸には、JR西日本の神戸駅や
新幹線の新神戸などがありますが、
三ノ宮が神戸市の中心地となり、
JR・阪急・阪神・地下鉄の駅があります。
以前にも神戸空港は使ったことがあるのですが
神戸に滞在するのは、はじめてでした。
三ノ宮の周りには異人館街があったり、
南京町とよばれる中華街、
港のメリケンパークなどがあります。
ただし、今回は異人館街だけを歩きました。
坂道なかりのところを歩くので、少々疲れましたが、
久しぶりに都会を散策を楽しみました。
