2016年12月1日木曜日

179 Why think, why try:師走に

 師走は慌ただしいものです。そんな慌ただしさの中、その一年におこったことをいろいろと思い起こしてしまいます。当たり前のことを、初心に戻って、思いを新たにする必要があるのでしょう。そんな当たり前のことを紹介しましょう。

 月刊のメールマガジンを書く時、冒頭の書き出しを考える時、12月は「師走」という言葉を挙げて、いつもばたばたしている自分の書き出しとなっている気がします。しかし、今年最後のエッセイの冒頭はそんなことをやめようと考えていましたが、書き始めると、はやり師走の話題になっています。閑話休題。本題に入りましょう。
 私は、冬のシーズンになると、インフルエンザの予防接種がスタートすると、いち早く受けるようにしています。今年も10月中旬に受けました。大学教員がインフルエンザにかかると、卒業研究を提出する学生に迷惑をかけたり、講義の代行ができないので、補講を多数しなければならないので、やはり学生迷惑をかけてします。そのため、早目に予防接種をして対処しています。それでもインフルエンザにかかることはあるのですが、ただ症状はましになります。
 予防接種というと、ジェンナー(Edward Jenner、1749.5.17-1823.1.26)を思い出します。ジェンナーの研究以前にも、予防接種の先駆的手法はいろいろ試みられていたようです。1796年のジェンナーによってなされた実験が、最初のもと位置づけられます。それは研究の手法に則っているからです。
 天然痘は強い感染力をもっていて、致死率も高い病気です。ところが、天然痘に似た牛痘にかかった人は、天然痘にかからないという現象がありました。それに牛痘のほうが症状も軽く、完治することも知られていました。
 ジェンナーは、牛痘が天然痘の予防に使えるのではないかと、20年近くにわたって考え続けました。ジェンナーは、1787年に自分の子どもに天然痘の接種を試して成功し、1796年に牛痘の接種を使用人の子どもなどに試して、やはり成功しています。その成果は、1798年に発表され、種痘法としてヨーロッパ中にひろまり、現在では天然痘の根絶宣言がだされています。
 このような人体実験は、たとえ身内であっても、倫理的には許されないことです。唯一可能なのは、自分自身を実験台にして試すことだけでしょうか。
 さて、ジェンナーの例でいいたかったことは、種痘にいたる研究過程のことでした。なにか課題があったとき、それを解決するために、2つの大きなステップがあります。新しい答えを思いつき、正しいかどうかを試すことです。ジェンナーでは、牛痘の接種を思いつくこと、それを実証する実験をしていくことです。
 思いつくこと、あるいはひらめくことは、誰にでもできるものではありません。しかし、唯一の道は、常にその課題に取り組み、考え続けていくことでしょう。課題によっては、少しずつ地道な努力を続けることで、解決策が見えてくるものもあるでしょう。あるいは、ある時一気に解決策を思いつくこともあるかもしれません。前者ならば、努力が報われるタイプの課題で、努力を続けていける人て、より大きな努力をした人が、いち早く結果をえられます。後者なら、まずは課題を必死になって考える必要があります。そしてあるとき突然、答え思いつくものです。セレンディピティー(serendipity)とも呼ばれているものです。セレンディピティーは、考え続けた人、誰もがえられるものでありません。でも考え続けないと、セレンディピティーはありません。努力は必要ですが、報われないこともあるので、大変です。
 解決策を思いつくことも重要ですが、次なるステップである試行することも重要です。その試行や検証が難しい場合、大変な作業を伴う場合、事前に大変そうだと想像できそうな場合、ついつい検証作業を躊躇してしまいます。そんなことがあると、解決策を考える時にも影響がでてきそうです。
 当たり前のことですが、生命に関わることや、大変な手続きや手間のかかること、巨大や費用や装置が必要なこと、大きな組織でしなければならないことなど、その実験を躊躇してしまう要因はいろいろありそうです。あるいは、解決策を考える時点で、そのような要因があるものは、除外してしまっているかもしれません。
 さて、研究をするとき、新しいことをはじめるとき、ジェンナーの思考、検証過程には重要な示唆があると思います。ジェンナーのジョン・ハンターのもとで医学の手ほどきをうけました。ジェンナーが実験に踏み切る時、師匠のハンターからの手紙にあった言葉、
Why think, why try
(なぜかを考え、なぜかを試す)
というのを思い浮かべたそうでです。そして、人体実験に踏み切ったそうです。
 課題解決の手法として、考えること、試すことは、当たり前のことです。でも、その当たり前のことをすることが大変な場合があるからこそ、ジェンナーもハンターの言葉の後押しが必要になったのでしょう。
 私も今年の師走にあたり、再度思い起こしましょう。
Why think, why try

・根雪か・
北海道な12月前に、大雪となりました。
11月にも何度か吹雪くことがありました。
珍しく本州にも雪が降りました。
今年は、根雪も早そうです。
でも、天気さえよければ、
まだ溶ける時期でもあります。
冬至まで根雪はまって欲しいのですが、
どうなるでしょうか。

・心を御する・
今年は、忙しかったです。
この職場に来て以来
もっとも忙しい1年となりました。
この忙しさは、あと少し続きそうです。
忙しさの原因は、はっきりしています。
校務の多さと、研究上の成果報告の多さに
由来するものです。
校務は終わっても疲労感が高まりますが、
研究は大変ではありますが、
終われば達成感がでてきます。
このような違いは、自身の心の持ちようだと思いますが、
心はなかなか御するのが難しいものです。